ユニクロ、4年ぶり靴販売に勝ち目はあるか

約4年ぶりの挑戦は吉と出るか――。ファーストリテイリングは4月22日、カジュアル衣料店「ユニクロ」の国内全店で同月27日からシューズを発売すると発表した。

「スリッポンスニーカー」と「シューレーススニーカー」の2モデルで、各5色というラインナップ。サイズは23〜28センチメートルを1センチ刻みで展開する。価格は各2990円(税抜き)。今後も品ぞろえを拡大していく意向だ。

■ トータルコーディネートを提案

 実は、同社は4年前までシューズの販売も手掛けていた。2005年に靴小売業のワンゾーン(旧・靴のマルトミ)を買収、2008年に婦人靴のビューカンパニーを子会社化するなどしてシューズ事業に本格参入。2009年からは「ユニクロシューズ」ブランドとして販売してきたが、業績不振から2011年8月に撤退していた。

 会社側は「以前は靴のデザインが服と合っていなかった。服に集中するために撤退した」と、撤退理由を説明。今回の再参入については、「これまでユニクロは服に加え、帽子やベルト、マフラー、バッグといったアクセサリー類を充実させてきた。このラインアップにシューズが加わることで、トータルでコーディネートを提案できるようになる」と狙いを語る。

 服と同様にSPA(製造小売業)型で再参入する。企画段階からかかわり、クッション性やグリップ性、耐久性など高い機能性を実現しながら、中国の協力工場で生産することで低価格に抑えたのが特徴だという。

 ユニクロのこうした動きに対し、ライバル各社の反応は冷ややかだ。

「東京靴流通センター」などを展開する靴量販店大手チヨダの舟橋浩司社長は同日、「ユニクロは店舗が駅前立地という点で脅威になる」とした一方、「そこで買う人は、靴屋にわざわざ行かず品質を気にしない人が少なくないだろう。われわれとしては、豊富な品ぞろえとフィッティングが命と思っており、それをしっかりやることで優位性を維持できる」と胸を張った。

 靴チェーン大手のABCマート幹部は「まったく脅威に感じない。われわれはもう少し高めの価格帯で攻めているので、競合もしない。服よりも非効率な靴事業に、もう一度参入して勝機があるのだろうか」と疑問を呈する。

■ 在庫や生産面の管理に難点

 実際、靴はアパレルに比べて参入障壁が高い。理由は在庫管理の難しさだ。服の場合、サイズはS、M、Lの3種類が基本になるが、靴は23〜28センチまで0.5〜1センチ刻みであることが多い。さらに、色違いが豊富にあるため、アイテム数が増えてしまう。

 ユニクロは服と同様、自社で在庫を抱えてシューズを売る考えだが、店頭では服のようにたたんで重ねる陳列ができない。バッグヤードでも広めの保管場所を必要とするほか、服よりも顧客対応の手順が多いため、店舗当たりの経営効率は格段に悪くなる。

 製造工程にしても、服より手数がかかるため、生産管理が大変だ。その分、アパレルに比べて大手のプレーヤーは少ないが、ユニクロが本気でやろうとすれば、乗り越えなければならない難題も多い。

 もちろん、アパレルショップでもアイテムの1つとして靴を販売しているところは多い。ただし、ユナイテッドアローズのようなセレクトショップは、服など自社のラインナップに合うナショナルブランドのシューズをセレクトして売っているケースがほとんどだ。

 今回ユニクロが売り出すスリッポンスニーカーは昨年からブームになっており、「流行の後追いとの印象がぬぐえない」という指摘もある。

 すでに無印良品では、ユニクロより1000円近く安い価格設定で「コットンスリッポンスニーカー」を販売しており、人気を集めている。ABCマートが扱う米ブランド「VANS」も、同様の商品を5000円超の価格で販売しており、堅調に売れているという。ユニクロが今になって販売を始めたところで、どこまで切り崩せるかは未知数だ。

 あるアナリストはユニクロの靴参入について、「おそらく数十億円の売り上げは見込める。最近は大型ヒット商品を狙わずに商品の多様化を進めており、その一環として考えると評価できる。少しやるだけなら、帽子と変わらない」と話す。これは裏を返せば、靴事業をこれ以上大きくするとリスクが増していくということだ。

 メリットよりもリスクのほうが大きく写る、今回のシューズ再参入。ユニクロはどこまで本気なのか。次の一手が気になるところだ。