パナソニックが「新冷媒」ノンフロン冷凍機 CO2排出量を6割削減
パナソニックは、スーパーマーケットやコンビニエンスストアで用いる冷凍ショーケース向けに二酸化炭素(CO2)冷媒を採用したノンフロン冷凍機を開発し、普及を進めている。CO2冷媒を利用すると、従来機よりCO2排出量や消費電力量を大幅に削減できる特徴をアピールする。地球温暖化防止などの観点から、より地球温暖化係数(GWP)の小さい「自然冷媒」や「新冷媒」への置き換えが課題となっている。パナソニック(当時は三洋電機)は自然冷媒の中でも、不燃性で毒性のないCO2の冷媒としての可能性に1997年から着目。CO2冷媒を採用した冷凍機やショーケース類を統合的に制御するコントローラーなども含め、高い省エネ性を実現するノンフロン冷凍機システムの開発を他社に先駆け、進めてきた。
今回開発したCO2冷媒対応の冷凍機に関しては、コンプレッサーの開発に注力した。冷凍機システムの冷媒圧縮工程において、CO2を冷媒とする場合、現在主流の冷媒「R404A」に比べ、約4倍高い圧力まで冷媒を圧縮する必要がある。そこで同社は、CO2を効率よく圧縮するため、冷凍機内部に2つの圧縮部を内蔵し圧縮を2回に分けて行うという世界初の「CO2ロータリー2段圧縮コンプレッサー」を開発。この技術により冷凍機の高効率化を図るだけでなく、振動や騒音も少なく、高信頼性も実現した。
また冷凍機出口の冷媒を一部分岐し、その冷媒を利用して分岐元の冷凍機出口の冷媒自体を冷却するという独自の「スプリットサイクル」技術を採用。これにより冷凍機出口の冷媒を、外気温度より下げることができ、冷凍能力の向上を図っている。
このほか、CO2冷媒を最適に制御できる冷凍ショーケースの開発や、店舗内の冷凍機器を統合管理・制御するマスターコントローラーも併せて整備した。こうした各種技術の開発により、高い省エネ効果を実現した。実店舗で省エネ効果を測定すると、消費電力量はR404Aを採用した冷凍機に比べ冷凍機器で25.4%、冷蔵機器で16.2%削減した。
また環境負荷削減効果は、省エネ性による間接影響と冷媒漏洩(ろうえい)による直接影響を合わせると、R404Aを採用した冷凍機に対しCO2冷媒を採用した冷凍機ではCO2排出量が58%削減できる。ただ、CO2冷凍機システムは高コストという課題を抱える。量産ベースに乗ったと言っても生産台数が少なく、部品のほとんどが専用部品となっているためだ。「顧客には環境負荷に対する優位性と省エネ性を訴求し、同時に補助金の活用を勧めながら業界スタンダードとなるように、さらに普及を促進していきたい」(アプライアンス社技術本部エアコン・コールドチェーン開発センターの三原一彦グループマネージャー)という。
パナソニックによると、冷凍機全体の年間需要約4万台に対し、2014年のCO2機は700台程度しか普及していない。ただ日本では今年4月から、フロン排出抑制法(改正フロン法)が施行され、代替フロンから自然冷媒化に切り替わる動きが加速するとみられ、ビジネスチャンスだ。このため同社は環境負荷低減などのメリットを前面に出し、「18年くらいには30%まで構成比を上げていきたい」(同社冷熱空調デバイス事業部冷凍機グループの橘秀和グループマネージャー)と意気込む。