VAIO、課題は親離れ ソニー時代のライバルと協業、早期黒字化目指す

20150216-00000007-biz_fsi-000-2-viewVAIO(長野県安曇野市)は16日、ソニーから独立してから初めて独自開発したノート型パソコン(PC)の新製品発表会を開催した。新製品「VAIO Z」は同社独自の技術や機能を搭載した高付加価値モデルで、汎用(はんよう)品と一線を画した。汎用化が進むPC市場であくまで独創性のある製品づくりにこだわり、早期の黒字化を目指す。

「Zはゼロの意味で始まりの意志」。同日の新製品発表会で新生VAIOへの思いを語ったのは伊藤好文・商品プロデューサー。VAIO Zには顧客が本当に必要と思える要素を盛り込んだ。一つは圧倒的な処理能力だ。第5世代のインテルコアプロセッサーを搭載。高密度実装技術と放熱設計技術を組み合わせた「Zエンジン」を独自開発し、処理速度を従来品より高めた。もう一つが15.5時間という長時間バッテリー駆動だ。従来は樹脂や板金のバッテリーケースが必要となるが、それを不要とする技術を開発した。これによりアダプターがなくても一日中、どこでもPCが使えるようにした。

さらに画面を切り離し、ペンで使えるタブレットモードや、プレゼン用モニターとして自在にPCの画面を折りたためる機能も搭載した。サイズは13.3インチ(2560ミリ×1440ミリ)。重さは1.34キログラムと軽くした。価格は19万円(税別)から。16日から受注を開始し、5月から販売する。また昨年10月に試作機として公開し、クリエイターと一緒に開発してきた「VAIO Z Canvas」も5月に発売する予定だ。価格は20万円台後半から(税別)。

VAIOは、ソニー時代のPC事業が赤字続きのため、同社から切り離された。現在は240人体制で事業を行っている。汎用化が進むPC市場で差別化を図り、独自のポジションを確立し、早期の黒字化が大きな課題だ。販路では依然、ソニーストアを経由するなど親離れができていない。だが、ここに来て、他社とのパートナー戦略に乗り出し、変化の兆しが出ている。現在、ソニー時代にはライバルだったキヤノンや日本通信などと協業し、新規事業にも力を入れている。関取高行社長は16日の新製品発表会で、「1号機ができたので、これをてこにパートナーと協業しながら、新たな形を作りたい」と意気込みを語った。ソニーのイメージが強いVAIOだが、親離れし、黒字会社として事業を継続できるのか、これから本当の意味で試される。