本場バーバリー日本上陸、高額商品の勝算

20150204-00059564-toyo-000-4-view英国バーバリーと三陽商会にとって運命の日が近づいている。

 1970年以降、バーバリーは日本におけるバーバリーブランドのアパレル商品の企画・製造・販売ライセンスを、三陽商会に供与してきた。だが、今年6月に契約が終了し、約半世紀続いた蜜月の関係は区切りを迎える。以後、日本のブランドは、バーバリー自らが手掛ける。

 派生ブランドとして三陽商会が90年代に立ち上げた「バーバリー・ブルーレーベル」「同ブラックレーベル」に関しては、バーバリーを象徴するチェック柄を継続使用するため新たにライセンス契約を結ぶが、「バーバリー」の名称やロゴは使わず、新名称で再スタートする。バーバリーブランドが抜けることで、三陽商会は営業利益で2014年12月期の87億円から15年12月期の2億円へと、業績の急縮小を想定している。

 一方、バーバリーにとっても、短期的には日本事業の収益落ち込みは避けられない。前14年3月期、日本からのライセンス収入は6200万ポンド(約110億円)で、安定収益源となっていた。

 しかし、7月からは三陽商会が保有する、300以上のバーバリー売り場を失う。15年1月時点でバーバリーの直営店は16店(路面店4、百貨店内12)。今後はそれを独自に増やす必要がある。

■ 世界で直営化を進めるバーバリー

 それでも日本事業の直営化は既定路線だった。バーバリーは2000年、スペイン事業のライセンス供与を中止したことを手始めに、世界各国で直営化へと舵を切る。三陽商会による展開で市場に定着していた日本は、残された最後の1ピースだった。

 直営化を進める前のバーバリーは、国ごとに品質のバラツキが生じ、ブランドイメージを毀損していた。それを「ラグジュアリーブランド」として世界中で統一。直営化の目的はその点にあった。

 バーバリーがいう「ラグジュアリー」とはどう意味か。アジア太平洋地域CEO(最高経営責任者)のパスカル・ペリエ氏は、「長い歴史があり、熟練の職人技に裏打ちされた、最高の品質を備えていること」と説明する。

トーマス・バーバリーによって1856年に創業されたバーバリーは、第1次世界大戦中にトレンチコートを生み出す。以後、トレンチコートは、同社を象徴する商品だ。

 職人技はそのトレンチコートの製造に遺憾なく発揮される。トレンチコートの肝である襟の裏の縫製は、英国の750人の職人が、1年かけて技術を習得した後に手縫いしている。裏地には「Made in England」のタグが付く。

 中身の違いは価格の差にも表れる。バーバリー直営店で売られている標準タイプのトレンチコートは20万円台前半。一方、三陽が手掛けるものは、10万円台前半だ。

 世界各地でのこうしたラグジュアリー商品への統一が奏功し近年の業績は好調だ。欧州、米国、アジアなど各地域で満遍なく成長し、前14年3月期の営業利益は、4億6000万ポンド(約828億円)と5期前の2.5倍に拡大。直近の四半期決算(14年10〜12月)でも既存店売上高は前年同期比で8%伸びた。

 そんなバーバリーにとって、日本は新たな成長が期待できる地だ。確かに長期にわたってバーバリー商品は存在していたが、三陽商会によるそれは、ラグジュアリーの一つ下のプレミアムブランドと位置づけられた。三陽商会の契約工場で製造され、生地なども異なる。

ただ、日本は、世界2位の富裕なマーケット。今後の攻め方次第で大きな可能性を秘めているというわけだ。

 バーバリーは、新たに別格の商品を引っ提げ、17年3月期には日本事業で売上高1億ポンド(約180億円)、利益2500万ポンド(約45億円)を目指す。さらに中長期的には日本市場での売り上げを全体の10%程度にしたいとしている。

 店舗数は17年3月期までに、百貨店内を含め、30〜55(現在16)を計画。ペリエ氏は「ラグジュアリーブランドとしては、三陽商会が保有する300店は露出が過多だった。立地を厳選していきたい」と今後を語る。

 中でも旗艦となる路面店を重視。現在の表参道、銀座、六本木、神戸に加え、今年春に心斎橋、秋には新宿への出店が決定している。

■ 百貨店側には期待と不安が交錯

 はたして新バーバリーは日本で受け入れられるのか。実はこの冬、三陽のバーバリーコートが売れている。ライセンス切れを前に、駆け込み買い現象が起きているのだ。

 ある百貨店関係者は「日本人はあのチェック柄などバーバリーが大好き。特に地方百貨店では核テナントになっていた。が、価格の上昇を考えると、今後は従来ファンの多くは離れていかざるをえないだろう」と不安視する。

 一方、別の百貨店関係者は、「英国ブランドで圧倒的ナンバーワン。売り場を提供する百貨店と協力関係が築ければ、新たな優良顧客を獲得できる」と期待を寄せる。

 世界で成功した直営モデルは日本で通用するか。期待と不安が交錯している。