丸紅、「減損1200億円」を招いた2つの誤算

資源価格下落の影響がいよいよ総合商社の決算に及び始めた。総合商社大手の丸紅は1月26日、2015年3月期に1200億円の減損を計上すると発表した。これにより、今期の純利益は従来予想の2200億円から1100億円へと半減する見通しだ。

減損の内訳は、北海やメキシコ湾、シェールオイル関連の油ガス事業で950億円。チリの銅鉱山で100億円、豪州石炭事業で50億円と資源関係が中心だ。このほか、2012年に同社の買収額としては過去最大となる36億ドル(約2800億円)で買収した米国の穀物メジャー、ガビロンが買収のれんで500億円の減損損失を出す。

 なお、5つの案件の減損総額は1600億円だが、税効果によるプラス要因400億円があるため、税後ベースでの実質減損額は1200億円となる。

■ 相乗効果出せなかった米穀物事業

 「(1バレル=)45ドルまでの下落は想定していなかった」と、26日の記者会見で国分文也社長が語ったように、最大の要因は原油価格の下落だ。2011年をピークに石炭や鉄鉱石市況の低迷に加え、原油価格は2014年夏から半年で約5割急落。採掘コストの上昇も重なり、油ガス関連事業は大幅な減損を強いられた。年明けからは銅価格も急落し、商品市況は全面安の様相を呈し始めている。

 もっとも今回、1000億円を超える巨額減損になったのは、ガビロンで500億円もの減損を認識したことも大きい。「買収時に相当シナジーを見込んでいたのは間違いのない事実」(国分社長)との言葉通り、丸紅は当初、ガビロンも含めた米国の複数拠点での穀物集荷事業と、中国を中心としたアジアでの販売網の相乗効果を想定していた。

 だが、販売先の重複の解消など連携がようやく具体的に動き出したのは昨年9月ごろからだという。今期豊作を見込んでいたガビロンは150億円の純利益計画を掲げていたが、100億円へ下方修正せざるをえなくなった。

丸紅は2013年3月期に純利益が2000億円を突破。2013年4月に、朝田照男現会長から社長のバトンを受け継いだ国分社長は、ガビロンを柱に2016年3月期に純利益2500億〜3000億円への飛躍を目指していた。ただ、1000億円を超える巨額ののれん代に対して、買収当初から「高額な買収だったのではないか」という声が絶えなかった。

 26日の会見で、過去の投資判断の甘さを指摘された国分社長は、「今後大きなのれんがかかる案件は、従来以上に精緻に見ていく必要がある」と説明。一方、今回の減損でガビロンの残存簿価は1000億円から500億円にまで減少し、「(これ以上のれんを)追加で落とすことはない」と断言した。

■ 来期も厳しい状況続く

 買収のれんの減損は一過性の損失に過ぎないが、資源市況下落の影響は今期のみにとどまらない。原油安の総合商社への影響は、通常数カ月から半年程度のタイムラグが出るなど、来期以降の業績への影響も必至だ。丸紅が今回、資源関連に加えガビロンの減損を一括して掃き出したのは、今期中に悪材料を全て膿出ししたいという考えがあるからだろう。「今後もしばらくは資源市況の低迷等を含めて厳しい経営環境が継続する。現在認識できる減損はすべて払拭することで、来期以降は身軽になる」(国分社長)としている。

 となると、気になるのは来期の純利益水準だが、これについて国分社長は「意識しているのは2000億円」と答えた。今期の一過性の減損がなくなり前年度比では改善するものの、減損を見込んでいなかった今期の当初計画の2200億円と比べると減益に転じる、という厳しい見方だ。

 昨年9月末に住友商事がシェールオイル開発事業を中心に2400億円の巨額減損を出したのは記憶に新しい。第3四半期の決算発表を間近に控える三井物産や三菱商事なども2014年度中に原油相場急落による大幅な減損を認識するのか。資源による成長神話が崩れる中、総合商社各社は一段と非資源分野での収益力強化が求められる。