再生エネルギー 買い取り抑制策拡大 電力5社再開へ

太陽光などで発電した電気の買い取りを電力会社に義務付けた再生可能エネルギー固定価格買い取り制度を巡り、九州電力など電力5社が新規買い取りを停止した問題で、経済産業省は18日、制度の見直しを決めた。電力会社が買い取りを抑制できる仕組みの拡大が柱。来年1月から導入する。これを受けて電力5社は同日、買い取りを年明けまでに順次再開すると発表した。だが、買い取り抑制について、再生エネ事業者には不安が広がっている。

 電力は供給が需要を上回っても下回っても送電網にトラブルが生じ、停電が起こりやすくなる。電力5社(北海道、東北、四国、九州、沖縄)は「再生エネ電力の受け入れ可能量を超えてしまう」と9月以降に相次いで買い取りを停止した。経産省は買い取りを抑制する仕組みを拡大して、供給過剰を回避する。同時に再生エネ事業者当たりの買い取り量を減らし新規参入余地を確保する。

 現行の買い取り抑制の対象は、発電能力500キロワット以上の大型の太陽光と風力で、抑制期間は年30日に限られている。見直しは対象を住宅用を含むすべての太陽光と風力に拡大。さらに買い取りを停止した5電力と中国、北陸電力は太陽光の買い取り抑制期間の上限を撤廃できるようにする。

 また、再生エネの買い取り価格の決定時期は現在、電力会社に買い取りを申し込んだ時点だが、来年度から契約成立時にずらす。買い取り価格は毎年見直していて、価格引き下げを反映しやすくする。電力会社が、予定日を過ぎても発電を開始しない事業者との契約を解除できるようにもする。太陽光パネルの値下がりを期待して、買い取りを申し込んでも発電しない悪質な事業者が相次いだため、これを排除する狙い。

 買い取り抑制策の拡大で再生エネ事業者にとっては「電力を売れないリスク」が高まる。地方では広い土地を活用した大型の太陽光発電施設(メガソーラー)の建設が相次いだ。30カ所以上のメガソーラーを運営する芝浦グループホールディングス(北九州市)は「発電できない期間が年30日を超えると、設備の管理コストがまかなえない」と懸念する。一般家庭でも「マイホーム購入の際、太陽光発電の電気を売って住宅ローン返済に充てる予定だった人が購入を見合わせている」(住宅メーカー)という。

 ◇送電網改革、先送り

 経産省が再生エネ固定価格買い取り制度見直しを決めたが、買い取り停止に伴う混乱をひとまず抑えるための付け焼き刃的な対策に過ぎない。買い取り拡大に向けた送電網充実などの抜本改革は先送りされた。

 買い取りを停止した電力5社の受け入れ可能量は、国が認定した再生エネの発電能力の半分程度。再開しても新たに受け入れられる量は限られるとみられる。

 一方、東京、関西、中部の電力3社は買い取り可能量に十分余力がある。地方から大都市に再生エネ電力を流す送電網の整備が不可欠だが、電力会社は「地域独占」に安住していたため、電力会社を結ぶ送電網が手薄だ。必要な送電網の整備には数兆円かかるとされる。だが費用は電気料金に上乗せされる可能性が高い。

 国民負担を求める場合、再生エネの将来的な導入目標を決め、負担の議論を深める必要がある。制度見直しを検討した経産省の有識者会合では「再生エネの適切な導入量を明確にしなければ、実のある議論ができない」との意見が相次いだ。政府は再生エネの導入目標の設定が急務だ。

 【ことば】再生可能エネルギー固定価格買い取り制度

 東日本大震災後、再生可能エネルギーの普及に向け2012年7月に導入された。再生エネ事業者は送電網を持たないため、政府が認定した再生エネで発電された電気を、電力会社が最長20年間、一定価格で買い取る。買い取り費用は電気料金に上乗せされている。