関電来春再値上げ 原発依存、家庭にしわ寄せ 企業は新電力へ

「消費税増税に加えてまた料金値上げか」−。関西電力が電気料金の再値上げの方針を発表した17日、兵庫県内の企業や市民が反発した。「原発が再稼働しておらず、安定供給に支障を来す恐れがある」(八木誠・関電社長)。火力の燃料費高騰が背景だが、原発依存のしわ寄せが一般家庭や企業に押しつけられる構図が見える。

【企業は新電力へ切り替え加速】

 「節電で使用量を減らしても料金は確実に上がっている」と主婦グループ「神戸友の会」(神戸市中央区)生活部リーダーの住吉民子さん(58)。エアコンの温度調整や待機電力の削減などで努力を重ねてきた。「生活全般に響く問題」とみる。

 昨年春に続く再値上げとなり、企業の困惑も深い。煮豆・つくだ煮の小倉屋柳本(神戸市東灘区)の河田招稔経営推進本部統括部長は「前回の値上げ以降、生産効率を上げてカバーしてきたが、今度ばかりは打つ手がない」。関電自身による経営効率化の取り組みも見えてこない。

 一方、関電と供給契約を打ち切る企業も。今年4月から12月1日までで4263件で、13年度(2987件)をすでに上回る。電力を安く供給する特定規模電気事業者(新電力)への切り替えが進んだとみられる。

 東日本大震災前、関電の発電量に占める原発の割合は約5割と高かった。「原発再稼働が経営の安定化の最優先課題」(関電首脳)とするゆえんだ。

 この日、関電高浜原発3、4号機(福井県)の再稼働について原子力規制委員会が「新規制基準に適合」を認めた。

 高浜原発の50キロ圏内にある篠山市。同市原子力災害対策検討委員会委員で主婦の玉山ともよさん(45)=同市=は「消費税については選挙という選択権があった。原発再稼働も電気代値上げも、反対の声が全く届かないという無力感でいっぱいだ」と声を落とした。

 原発事故後、放射能の影響を懸念し、給食の安全性を考える会を立ち上げた北川博道さん(42)=神戸市垂水区=は言う。「国が主体的に根拠を示して『安全だ』と断言もしていない。不安がぬぐえない中、再稼働は受け入れられない」(まとめ・桑名良典)

【神戸市長は「回避」要請】

 関西電力神戸支店の幹部が17日、同株を保有する神戸市に値上げの説明に訪れた。面会した久元喜造市長は「昨年5月にも電気料金が引き上げられ、円安に伴う輸入品の価格上昇などで市民や企業の負担はさらに増大している」と指摘し、「経営の効率化に最大限努力し、再値上げを回避してほしい」と申し入れた。

【「運賃にすぐ転嫁は困難」JR西日本社長】

 関西電力の電気料金再値上げについて、JR西日本の真鍋精志社長は17日の定例会見で「再値上げ後すぐ運賃に転嫁するのは難しい」と運賃値上げには慎重な姿勢を示した。

 昨年4月に関電が企業向け電気料金を値上げした影響などで、同社の2013年度決算で電車を動かす「動力費」などの電気代金が前年度比約67億円増加した。

 真鍋社長は「原発の善しあしは申し上げられないが、地域のために国と電力会社が長期的なエネルギーの安定供給について話し合ってもらいたい」と述べた。