衆院選 東北、アベノミクス恩恵まだ

衆院選(12月2日公示、14日投開票)は、安倍政権の経済政策「アベノミクス」の是非が最大の焦点となる。東日本大震災からの復興途上にある東北経済は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動減が尾を引く。雇用のミスマッチなどによる人手不足や、大企業と中小企業の設備投資の格差が表面化するなど、アベノミクス効果の浸透に時間がかかっている。

<消  費>

 東北の個人消費は安倍政権発足後、復興需要もあって堅調に推移してきたが、ことし4月の消費税率引き上げ後は回復が遅れている。
 14年4〜6月の東北の1カ月当たり消費支出(総務省まとめ)は、前年同期に比べ4.3%減の25万1981円。7〜9月も0.9%減の26万2963円と回復していない。消費税が3%から5%に引き上げられた1997年に4〜6月の1.9%減から7〜9月で0.5%増と巻き返したのとは対照的で、アベノミクスの効果が見えない。

<雇用・賃金>

 東北の9月の有効求人倍率は1.11倍。復興需要を背景に被災3県を中心に高い水準が続き、失業率も改善した。一方、雇用のミスマッチや企業側の人手不足が顕在化。賃金は上昇傾向で、8月の宮城県内の1人当たり現金給与総額(従業員30人以上)は前年同月に比べ2.5%増えた。
 宮城県中小企業団体中央会の及川公一専務理事は「原材料・燃料高で中小企業の経営は苦しいが、賃金を上げないと人が集まらない。業績を伸ばした大企業の賃上げとは事情が異なる」と話す。
 給与総額は増えているが、物価の影響を加味した実質賃金指数は、宮城で前年同月比1.8%減とマイナスが続く。

<設備投資>

 日銀仙台支店がまとめた東北の設備投資額は、製造業が14年度(9月調査時点の計画)で前年度比27.3%増となり、回復基調をうかがわせた。
 ただ、大企業が82.8%と大幅増を見込むのに対し、中堅・中小企業は0.2%の微減。非製造業も大企業が2.5%減にとどまる一方、中堅・中小企業は7.2%減と落ち込みが大きい。
 日銀仙台支店の高橋経一支店長は「大企業は工場の新設やライン増設など生産能力増強に向けた投資だが、中堅・中小企業は老朽化設備の更新が中心。今後は人手不足や資材高騰が設備投資のマイナス要因となる可能性がある」と分析する。