エキセントリックな日本を伝える CNN東京特派員の復活

CNNが今年3月、2年ぶりに東京に特派員を駐在させました。米国で事件や麻薬問題、不法移民などの報道に携わってきたウィル・リプリー特派員(33)が、初の日本滞在で注目し、報じたものとは。

フナッシ−に「ワッツゴーイノーン!?」

 ジャーナリズムの名門ミズーリ大出身。今春に東京特派員としてCNNに採用されるまでは米国内のテレビ局でニュースアンカーやリポーターとして活動していた。日本に縁はなかったが「海外特派員になるのが夢だった」と応募し、採用された。日本語は勉強中だ。

 報道しているのは、福島第一原発や集団的自衛権など硬派な話題だけではない。6月にリポートして「これまでで一番反響が大きかった」のが、フナッシ−だ。

 「日本のキャラクター文化を特集しようと取材していて、ふなっしーのイベントを見たんです。ファンたちは『ふなっしー!』と絶叫し、ふなっしーは『ヒャッハー!!』と叫んで跳ね回っている。『ワッツゴーイノーン(何が起こってんだ)!?』です。びっくりした」

 衝撃を受けたリプリー氏は放送の中心テーマをふなっしーに。アポ取りを試みるが断られる。「さすがロックスターなみの人気者だと思いました(笑)」。結局、アポなしでイベント会場を訪ね、会場の外で待ち続けてインタビューに成功した。

「なぜ、こんなことしているんですか?」というリプリー特派員の直球の質問に、ふなっしーがちょっと照れながら「みんなが喜んでくれるからかな」と答えるこの放送。CNNのスタジオで女性キャスターがふなっしーに爆笑し、進行が滞るほどの破壊力で、ふなっしーの存在を世界に広めた。

セーラー服おじさんも登場

 「視聴者を驚かせたい」というリプリー特派員が次に注目したのが、セーラー服おじさんだった。

 リポートの中身はいたってまじめだ。道行く人に笑顔で手を振り、一緒に記念写真を撮る小林さんをカメラで追い、インタビューする。小林さんは語る。「日本人は他の人の意見に左右されがち」「私はただ、かわいらしい格好がしたいだけ」

 人気者の小林さんだが、ときに大声で侮辱されることもあるという。「どう対応するんですか」というリプリー特派員に対し、笑顔で手を振る、と答える小林さん。「やりたいことがあるなら、やりなさい。自分らしく生きなさい」というメッセージを伝えている。

 リプリー特派員はCNNのサイトにこう書いた。

 《体制や慣習への順応が社会の根底にある日本においては、個人が自由を求め、理想とする道を歩むことはときに難しい。とくに、それがエキセントリックなものにつながる道ならばなおさらだ。だからこそ、我々は小林さんを称賛する》

「日本をより深く伝えたい」

 日本が世界で批判される論争的なテーマにも取り組んでいる。

 捕鯨に関するリポートでは、小学生たちがクジラの解体を見学し、給食で食べる様子を紹介。捕鯨に対する海外からの批判の声とともに、「私たちはクジラを400年食べています。子孫にもその伝統を受け継いで欲しいと思います」という漁業関係者の声を伝えた。

 リプリー特派員は「日本の社会をより深く世界に伝えたい」と語る。

 「セーラー服おじさんの姿を見た人は最初、笑います。そこで終わらせない。思慮深い彼の言葉を伝えることで、彼を尊敬する人も出てくるでしょう」

 「捕鯨についても、批判だけでなく日本の漁業関係者の声も伝え、幅広い視点を提供する。そういうリポートをしていきたい」