奈良・診療報酬詐欺「職員大半が患者」内部証言

奈良市の医療法人「光優会」を巡る診療報酬詐欺事件で、法人グループの職員のほとんどが、奈良県警に逮捕された理事長で精神科医の松山光晴容疑者(54)のクリニックで診察を受けていた患者や元患者だったことが分かった。複数の元職員が毎日新聞の取材に証言した。こうした職員は内部で「患者職員」と呼ばれていたという。調べでは、架空請求の多くは患者職員名義で行われており、松山容疑者が強い立場を悪用していた疑いがある。

 光優会グループは、診療所「クリニックやすらぎ八木診療所」(同県橿原市、昨年8月に閉院)の他、奈良、三重両県で自立支援の訓練など福祉サービスを行う事業所6カ所を運営。グループ全体で約60人が勤務していたという。

 看護師として診療所で1年半勤務した女性も精神疾患がある患者職員で、働きながら松山容疑者から抗うつ剤など6種類の薬の処方を受けていた。

 事業所で行った福祉サービスに支払われる自立支援給付費について、女性は「帳簿に虚偽のサービス内容を記載し、請求を水増しした。松山容疑者の指示通りに動いた」と証言。患者職員にグループの関連店舗の戸締まりをさせたことを「福祉施設での自立訓練などのサービス」と偽って自立支援給付費を請求したこともあったという。

 また、10カ月勤務した患者職員ではない看護師女性も「職員らを面接と称してクリニックに呼び出し、受診したことにしていた」と不正の手口を明かす。

 患者職員だった男性は「主従関係を利用できる患者職員はうまみがあったのだろう。弱者を食い物にする行為は許せない」と訴えた。

 松山容疑者は24日、元職員(健常者)をクリニックで診療したように装い、2011年3月に診療報酬約362万円を東大阪市から詐取した容疑で逮捕された。県警は10年以降、患者職員を含む少なくとも十数人の名義で数千万円をだまし取ったとみて調べている。