「コーヒー戦争」、今度は駅ナカが戦場に

「ジョージア」の淹れたてコーヒーが”駅ナカ”のコンビニで飲める――。缶コーヒー業界のトップブランドが、最需要期を前に大きな手を打った。
日本コカ・コーラは10月、コンビニのカウンターコーヒー事業に参入した。それも駅構内のコンビニだ。独自に開発した「ジョージア本格コーヒーマシン」を、JR東海の子会社・東海キヨスクが運営する駅ナカコンビニ「ベルマート」で展開。現在、東京駅と名古屋駅の2店舗のみで導入されている。価格はブレンドコーヒー100円、アイスコーヒー150円だ(いずれも税込み、以下同)。

 日本コカは今までも、カップ式自販機や外食店でのドリンクディスペンサーなど、缶やPETボトル以外のコーヒー事業に参入していた。が、「『ジョージア』ブランドでは展開していないものもあり、ビジネスのメインは缶・ペットボトルのコーヒー事業」(日本コカ・コーラ)という。

 コンビニコーヒー参入の経緯については、「消費者の嗜好がドリップ式コーヒーに移行しているため、それに対応すべく新たにマシンを開発した」と語る。マシンは「大手コンビニは抽出に約40秒かかるが、ジョージア本格コーヒーマシンは約30秒しかかからない」(ジョージアの店頭販売員)と、駅立地に合わせスピーディーな提供を可能にした。今後はホテル、カフェなども視野に、展開を拡大したい考えだ。

■ 頭打ちの缶コーヒーに危機感

 日本コカのジョージアと言えば、缶コーヒー市場で長くトップシェアを誇る看板商品。しかし近年、スターバックスなどのカフェ人気や競合メーカーの攻勢を受け、シェア・数量ともに落としている。缶コーヒーのジョージアは、2003年に1億4030万ケース(1ケース約30本換算)出荷され、シェア約4割を誇ったが、13年には1億0470万ケースまで落ち込み、シェアも約3割まで縮小している(飲料総研調べ)。

缶コーヒー市場の横ばいが続く中、台頭してきたのがコンビニコーヒーだ。13年に参入したセブン‐イレブンは、淹れたてで100円の「セブンカフェ」が支持され、1日平均120杯を売り上げる成功を収めた。缶コーヒー「BOSS」を擁するサントリー食品インターナショナルでは、「コンビニコーヒーの登場で、コンビニにおける缶コーヒーの売り上げは、市場全体でマイナス5%程度影響したと見ている」と、13年度の決算会見時に打ち明けた。

 こうした劣勢の状況下、日本コカは、コンビニコーヒーに参入する準備を整えていた。手を組んだ東海キヨスクは、コンビニコーヒー導入の理由について、「サービス向上と売り上げ拡大を図りたいキヨスクと、淹れたてコーヒー事業への本格参入を決めた日本コカ・コーラさんの思惑が一致した」と説明する。ベルマート2店舗では「導入当初より予想を上回る売り上げ」(同)を記録しているという。今後の利用状況を見て、新幹線の停車駅を中心に導入を進める方針だ。

■ 価格はホット、アイスともに100円

 JR東海だけではない。駅ナカでのコンビニコーヒーは、JR東日本エリアでもすでに始まっている。駅ナカコンビニ「NEWDAYS」を運営するJR東日本の子会社・JR東日本リテールネットは10月、コンビニコーヒー「EKI na CAFE」の本格展開を開始した。価格はホット、アイスともに100円だ。

 商品開発はコーヒー店の「ドトールコーヒー」と共同で実施。ほかにドトールは、原料やコーヒーマシンの供給、販促方法などノウハウの伝授を行っている。EKI na CAFEは約500あるNEWDAYS店舗のうち、現在40店舗で導入されており、2015年3月末までに70店舗に拡大させたい考えだ。JR東日本リテールネットは導入に関し、「駅ナカはお急ぎのお客様が多い。スピードと味、香りを両立させるために、独自ノウハウを持つドトールコーヒーと共同で開発した」としている。注力中のオリジナルスイーツとの買い合わせも狙う。

 一方、ドトールにとっては、自らの店舗とは別に、自社の技術で淹れたコーヒーが、好立地の駅ナカで安く販売されてしまうことになる。カニバリ(食い合い)が心配されるが、「220円のイートイン(自社店舗)と、100円のテイクアウト(駅ナカ)とでは、利用動機が異なる。バッティングする懸念はない」(ドトール・日レスホールディングス)と捉えている。安さとおいしさで昨年以来、人気が続くコンビニコーヒー。駅ナカという新たな舞台を機に、コーヒー戦争はますます熾烈なものになりそうだ。