安倍内閣 松島法相も閣僚辞任、小渕経産相に続き

小渕優子経済産業相(40)=衆院群馬5区=は20日午前、安倍晋三首相と首相官邸で会い、自身の関連政治団体による不明朗な会計問題の責任を取り、辞表を提出した。首相は受理し、経産相の臨時代理に高市早苗総務相を充てた。また、選挙区内で「うちわ」を配布していた松島みどり法相(58)=東京14区=も同日午後、首相に辞表を提出した。首相は受理し、法相の臨時代理に山谷えり子国家公安委員長を指名した。2012年12月に発足した第2次安倍政権で閣僚が辞任するのは初めてで、閣僚2人が同時に辞任するのは極めて異例。首相は女性活躍推進の象徴として内閣改造で女性閣僚5人を起用しただけに、政権に大きな打撃となるのは必至だ。

首相は2閣僚の辞表を受理した後、首相官邸で記者団に、「任命したのは私で、任命責任は首相である私にある。こうした事態になったことに、国民の皆さんに深くおわびする。政治の遅滞は許されず、後任を急ぎ選定し、課題に取り組んでいきたい」と語った。

 小渕氏は20日午前8時20分ごろから約30分間、首相と会談。「政治資金問題を引き続きしっかり調査し、政治家として襟を正したい。国政に遅滞をもたらすことは許されず、閣僚の職を辞したい」と辞任の理由を説明し、「内閣の一人として女性活躍や経済再生に貢献できず、申し訳ない」と首相に陳謝した。

 小渕氏はその後、経産省で記者会見し、観劇会をめぐる収入と支出が大きく食い違っていることについて「指摘を受けている通り、大きな疑念があると言わざるを得ない」と述べ、税理士ら第三者に調査を依頼する意向を示した。

 菅義偉官房長官は20日午前の記者会見で、「大変残念だが、首相は小渕氏の意思を尊重して受け入れた」と述べ、首相が正式な後任人事を速やかに進めると説明した。後任には閣僚経験のあるベテラン男性議員らが取りざたされているが、首相は再び問題が起きないよう慎重に人選しており、「そんなに早く決まる話ではない」(政府関係者)との指摘も出ている。

 小渕氏を巡っては政治団体「小渕優子後援会」(群馬県中之条町)と「自民党群馬県ふるさと振興支部」(同県高崎市)が10年と11年、東京都中央区の「明治座」で地元女性支持者向けに共催した観劇会について、計約3400万円を支出した一方、観劇料としては計約740万円の収入しか政治資金収支報告書に計上していなかったことなどが発覚。差額を政治団体が負担していれば、公職選挙法の利益供与に抵触するとの疑惑が浮上した。

 さらに、小渕氏の資金管理団体から百貨店のベビー用品や化粧品、著名デザイナーズブランドなどへの支払いも確認され、「公私混同ではないか」と批判が出ていた。

 小渕氏は調査を進める中で、多額の不明朗会計が世論や野党の理解を得るのは困難と判断し、閣僚辞任を決断した。野党は国会で攻勢を強めており、法案審議の停滞を懸念する政府・与党にも「辞任はやむを得ない」との見方が急速に強まった。

 小渕氏は故・小渕恵三元首相の次女。TBS社員などを経て、00年5月の恵三氏死去を受け、同年6月の衆院選に群馬5区から初当選し、現在5期。08〜09年の麻生内閣で少子化担当相として戦後最年少で入閣し、自民党内で「将来の首相候補」と注目された。今年9月に発足した第2次安倍改造内閣では、看板政策の「女性活躍」を象徴する女性閣僚5人の筆頭格として、2度目の入閣を果たした。

 一方、松島氏には公職選挙法違反の疑いが指摘されている。松島氏が野党に示した資料によると、松島氏は12〜14年に「うちわ」を約178万円で計2万1980本作り、選挙区内のイベントなどで配布。うちわは柄があり、名前やイラスト、成立した法律が記されていた。「法務大臣」の肩書の入ったものも多数配ったとされる。

 松島氏は国会審議で、うちわは有価物で公選法が禁止する寄付行為に当たるのではないかとの追及に、「うちわのように見えるかもしれないが価値のあるものではない。討議資料だ」などと釈明した。だが、民主党の階猛副幹事長が公職選挙法違反の疑いで東京地検に告発。与党内からは、松島氏も辞任させて「同時決着」を図るべきだとの声が出ていた。

 松島氏は首相の出身派閥である町村派に所属し、衆院当選4回。副国土交通相や副経産相などを歴任した。