リニア新幹線で生活どう変わる? GDPの7割稼ぐ巨大経済圏誕生も

《2027年○月○日午後10時半、品川駅から開業したばかりのリニア中央新幹線に乗り込む。今日は遅くまで同僚と飲んでしまったが、うとうとしているうちにもう名古屋に着いた。コンビニエンスストアで買ったビールを開ける時間もなかったが、この時間なら日付が変わるまでに家に帰れそうだ》

 リニアならこんな通勤も可能だ。最高時速は約500キロで、品川−名古屋間の所要時間は最短40分。現行の東海道新幹線の最短1時間28分から半分以下に短縮される。料金も現行の新幹線運賃(東京−名古屋の指定席で1万1190円)に700円を加算した程度に収まりそうだ。こうなると、名古屋はもはや東京の「郊外」になる。

 かつて東海道新幹線が開通した際に大阪からヒト、モノ、カネが首都圏に吸い取られた「ストロー現象」を懸念する声もあるが、むしろ政治・経済の中心地である首都圏とトヨタ自動車をはじめ日本の基幹産業が集積する名古屋圏が機能を補完し合えることに期待する声は多い。

 さらに45年に大阪まで延伸されれば、東京−大阪間は67分。人口が日本全体の6割に当たる約7300万人、日本の国内総生産(GDP)の7割、約350兆円を稼ぐ巨大経済圏が誕生する。「世界最大のスーパーメガリージョン(超巨大都市圏)を形成して、人の流れが劇的に変わる」。太田昭宏国土交通相もこう期待する。

 三菱UFJリサーチ&コンサルティングはリニアの経済効果について、移動にかかるコストが生産活動に回る結果、名古屋開業時で10.7兆円、大阪開業時で16.8兆円(いずれも50年間の効果)とはじく。

 さらに、リニアは東海道新幹線と違う路線を走ることで、「東海地震などの大災害に備えてのバックアップ」(JR東海)の意味合いも大きい。動き始めた夢の超特急が、日本の経済やライフスタイルを大きく変えることになりそうだ。