iPhone 6購入「音声定額プラン」が半強制に? プラン登場の背景とは ── 石川温

9月19日にiPhone 6/6 Plusが発売となり、この週末は家電量販店やキャリアショップが賑わいを見せました。 
 今回、iPhone 6/6 Plusを新規契約あるいは機種変更した際に、必ずと言って良いほど「音声定額プラン」を勧められるようです。
 「音声定額プラン」とは、月額2700円で国内の固定電話・携帯電話がすべて定額の範囲内で通話できるというもので、いつでも何時間でも定額内に収まるというのが魅力です。NTTドコモが「カケホーダイ&パケあえる」、KDDIが「カケホとデジラ」、ソフトバンクモバイルが「スマ放題」という名称でサービス提供されています。

従来の料金プランが選べなくなるキャリアは?

NTTドコモはかつての月額980円のプランが選べず、「カケホーダイ」プランに一本化されているため、音声通話をしたい場合は、この月額2700円のプランしか契約できません。
 KDDIとソフトバンクモバイルは、従来の月額980円の従量制プランと月額2700円の定額制プランの2つから選ぶことができますが、店員さんは月額2700円の定額制プランを勧めてくるケースがほとんどのようです。

「音声定額プラン」登場の背景は?

これまで30秒20円という通話料金体系が一般的だったのにも関わらず、なぜ月額2700円でカケホーダイという画期的なプランが登場してきたのでしょうか。
 最も大きな理由は「LINE」を代表とするインターネット電話サービスの普及です。LINEであれば、相手のIDさえわかれば、いつでもどこでも無料で通話できます。ネット環境の悪いところでは音質がイマイチだったりもしますが、「無料」であればそれも我慢できます。友達と何時間もしゃべっても無料となれば、携帯電話の090や080、070の番号は使わなくなるというものです。
 また、携帯電話各社では、「VoLTE」という新サービスを始めつつあります(NTTドコモはサービス開始済み、KDDIとソフトバンクはサービスを準備中)。これは、音声をLTEという通信回線に載せるという技術で、従来に比べて回線を占有しないことから、低コスト化が実現できると言われています。将来的にはVoLTEが一般的になることもあり、NTTドコモでは他社に先駆けて、音声定額制を開始して、顧客獲得を強化しようとしていました。

 これまで月に数千円を音声通話料に支払っている人が、月額2700円のプランに変更しただけでは、携帯電話会社は大赤字になります。そのため、携帯電話会社はすべての人に新料金プランを契約してもらい、「ほとんど音声通話をしない」という人にも月額2700円を支払ってもらうことで、収益を確保し、全体のバランスをとろうとしているのです。
 NTTドコモでは、すでに800万人が「カケホーダイ」のプランを契約していますが、同社では一刻も早く、5000万人近い全契約者に「カケホーダイ」を使ってもらおうと努力しています。

 しかし、一方で、最近は「格安スマホ」が人気です。音声通話料金やパケット料金をできるだけ抑えることで、スマホであっても月額1000円台の基本料金を実現できるとあって注目を集めています。携帯電話会社が月額2700円を基本とする動きがあるなかで、格安スマホ会社を選ぶ人が増えてくる可能性が出てきました。

そんななか、世間の動きを敏感に察知したのがKDDIとソフトバンクです。KDDIは新料金プラン「カケホとデジラ」をプッシュしつつ、従来の料金プランも終了時期未定で残し続けています。また、ソフトバンクモバイルも「スマ放題」が主力ですが、月額980円の「ホワイトプラン」も11月末まで契約可能です。ソフトバンクモバイルはホワイトプランを8月末までで新規受け付け終了するはずが、ぎりぎりのタイミングで延期を決めたほどです。

 KDDIの田中孝司社長は「(月額2700円の音声定額プランとデータの定額量を選べる新料金を投入したが)はっきり言うと、データを大量に使う人、電話をそんなに使わない人は前の料金プランをやめられないと思う」といいます。新料金プランは、電話をたくさんかける人には魅力ですが、電話をあまり使わない人には「値上げ」でしかありません。KDDIとしては、従来のプランも用意して、2つのプランから選べるようにしていくようです。

 iPhone 6/6 Plusが発売されて、各社横並びの料金プランのように見えますが、「旧プランを契約できるか」に違いがあります。こうした違いでキャリアを選ぶというのもひとつの選択肢と言えるでしょう。