保育士逮捕 退職恐れ虐待注意できず 背景に人手不足 千葉市の認可外施設

保育士が、子どもの口に無理やり夕食を詰め込むなどした強要事件。施設の女性施設長が、千葉市の聞き取りに対し、保育士の虐待行為に気付きながら、退職を懸念して注意できなかったとの趣旨の説明をしていたことが、市への取材で分かった。事件の背景に、保育業界が抱える慢性的な人手不足という問題があったと言えそうだ。

 市こども未来部によると、7月17日に女児の保護者の通報を受け、同23日と8月1日に同施設へ立ち入り調査し、施設長と保育士の聞き取りを実施。2人とも通報内容を認めた上、施設長は注意しなかった理由を「保育士が不足しているので、辞められると困ると思った」などと説明したという。

 虐待発覚前の同施設の職員数は施設長含めて5人で、うち保育士の有資格者は3人。事態を受けて、7月末に施設長と容疑者以外の3人は退職していた。

 同施設は、近隣施設との競争激化による児童数減少にも悩まされていた。月平均の入所児童数は2011年度に14・4人だったが、本年度(4〜7月)は6人と、定員(27人)の約2割にまで急減。本年度になって、近隣に認可保育所が3施設開所した影響だった。こうした中、保育士が減れば利用者にさらに敬遠されるとの懸念があったとみられる。

 市は4月に「待機児童ゼロ」達成を発表。今後は、保育の質の向上にも取り組む姿勢を打ち出していた矢先の事件に、こども未来部の片桐康之部長は「市民の信頼を損ねてしまい、非常に残念。全保育施設に虐待防止について注意喚起を行う。虐待の通報システムの構築も図りたい」と述べた。