パイオニア、カーナビ注力で大丈夫?

20140811-00000002-wordleaf-000-5-view経営不振が続いていたパイオニアに明るい兆しが見えてきました。同社の4〜6月期決算では赤字が大幅に縮小し、通期では増収増益の見通しとなっています。同社のAV機器部門はオンキヨーとの統合が決まっており、今後、同社はカーナビ関連分野に注力することになります。カーナビ市場はスマホに押され、縮小傾向ともいわれていますが、カーナビに特化する同社の将来は大丈夫なのでしょうか。

 8月5日に発表された4〜6月期の決算は、売上高が前年比3.7%増の1133億円、経常利益は2億8000万円の赤字でした。黒字転換は実現しませんでしたが、100億円近い赤字だった前年同期と比較すると大幅に状況が改善しています。カーナビの売上が好調だったことや、原価率の引き下げに成功したことなどから、収益性が向上しました。同社では、通期の業績を20億円の黒字と見込んでいます。

 同社は今年6月、AV機器などを手がけるホームエレクトロニクス部門について、オーディオ・メーカーのオンキヨーと統合することを発表しています。現在、最終的な詰めの交渉を行っており、このまま順調に統合が進めば、来年度以降は、ほぼすべてのリソースを得意のカーナビ分野に集中させることになります。

 もともとパイオニアは、オーディオ・メーカーとしてスタートした企業であり、同社ブランドはオーディオ業界で高い評価を得てきました。しかし、現在では売上高の約7割をカーナビ関連が占めており、もはやオーディオ・メーカーとはいえない状況となっています。得意分野にリソースを集中させることは経営戦略の基本ですから、同社の選択は間違っていないと考えられます。

 しかしながら、カーナビ市場は将来にわたって安泰かというとそうでもありません。スマホの普及に押されてカーナビは伸び悩む傾向にあるからです。カーナビは基本的に高額商品であることを考えると、今後、国内市場が大きく伸びるとは考えにくい状況です。

もっとも海外に目を転じると少し状況が変わってきます。グローバルに見れば、自動車市場はまだまだ伸びますから、スマホに押されているとはいえ、カーナビ市場にも成長の余地があります。矢野経済研究所によると、現在の全世界におけるカーナビの販売台数は年間1800万台程度ですが、2018年には2000万台を超える見込みです。

 また自動車の分野は、ロボット化による自動運転や各種ネット・サービスとの融合など、数多くの事業機会が存在します。カーナビの分野で高いシェアを維持できていれば、いずれやってくる自動車のロボット化時代においても、何らかの形でプレイヤーとして存続できる可能性が高いでしょう。

 同社は1980年代、カラオケブームに乗ってレーザーディスクに集中投資し、デジタル化の流れに乗り遅れるという苦い経験をしています。カーナビへのシフトが裏目に出ないようにするためには、まずは新興国の需要を確実に取り込んでいくことが重要です。