徳島・橘湾1号機停止 「老朽火力」トラブル頻発 夏の電力供給、懸念強まる

初めて「原発ゼロ」の夏を迎える中、全国の火力発電所でトラブルが相次ぎ、電力不足の懸念が強まっている。電源開発(Jパワー)は10日、橘湾火力発電所1号機(徳島県阿南市、105万キロワット)で不具合が起き、9日に発電を停止したと発表した。政府が夏の節電要請を始めた7月に入り、関西電力や北海道電力などでも火力発電所でトラブルが発生。電力各社は原発の停止に伴い古い火力をフル稼働するが、電力供給は綱渡りだ。

 Jパワーは、橘湾火力発電所1号機でボイラーの蒸気漏れが見つかったため、9日午後5時に発電を停止した。同社は「ボイラー冷却後に内部に入り原因を調査する」とし、復旧時期は未定としている。

 同発電所は関西、中国、四国、九州の各電力会社に電力を供給している。だが、中部を含む今夏の西日本の電力需要に対する供給余力(予備率)は3・4%と、最低限必要とされる3%をわずかに上回るにすぎず、停止が長引けば電力供給に悪影響が及ぶ。

 関電や中部電力の火力でもトラブルが相次ぐ。関電は部品交換のため計画的に運転を停止していた御坊発電所1号機(和歌山県御坊市、60万キロワット)を3日に再開する予定だった。しかし、一部の装置内に亀裂があるのが分かり、運転再開が6日にずれ込んだ。中部電も1日、碧南火力発電所4号機(愛知県碧南市、100万キロワット)の一部の装置で温度が上昇し、運転を停止した。今のところ復旧のめどはたたない。

 火力のトラブルが頻発する背景には、原発の代わりに運転開始から40年以上経過した「老朽火力」をフル稼働させていることがある。しかも原発が停止して以降、「供給力確保のため、計画通りに定期検査が実施できていない」(大手電力幹部)状況だ。不具合で8日から9日まで、出力を抑制していた北海道電力の奈井江発電所2号機(北海道奈井江町、17・5万キロワット)は営業運転開始から44年以上が経過している。

 政府のエネルギー白書によると、沖縄電力を除く大手電力9社の老朽火力の突発的な事故などによる想定外の停止は、平成22年度に101件だったのが、25年度は169件に上った。

 7月からの節電期間を前に政府は電力各社に対し火力発電所の「総点検」を行うよう指示。その結果、電力需給に影響を及ぼす異常は見つからなかったが、経済産業省幹部は「予断を許さない状態に変わりはない」と危機感を示す。