JA全中「廃止」見送りへ 農協改革案、看板掛け替えの恐れも

政府・与党が農協改革案で焦点となっていた、全国農業協同組合中央会(JA全中)を頂点とする中央会制度について、新制度に移行する方針を固めたことが分かった。政府の規制改革会議が13日に出す安倍晋三首相への答申でも、中央会制度の「廃止」の文言は明記せず、「新たな制度に移行する」との表現にとどめる方向。政府は今月下旬に決定する新成長戦略に反映する方針だ。ただ、新制度はJAグループの議論も踏まえて決める見込みで、看板の掛け替えに終わる恐れもある。

 農協改革をめぐっては、規制改革会議がJA全中などの一律的な経営指導で、「各地域農協の独自性が押さえ込まれている」として中央会制度の「廃止」を提言した。

 しかし、自民党には慎重論が根強く、10日に了承した与党改革案では「自律的な新たな制度に移行する」という玉虫色の表現に落ち着いた。規制改革会議も各地域農協の自主的運営は求めるが、与党の議論を踏まえて「廃止」の表現は見送る見込みだ。

 JAグループで農産物販売などを担う全国農業協同組合連合会(JA全農)は、株式会社化を前向きに検討する。ただ、共同購買などを独禁法の適用除外とする現行組織からの変更で、問題がないかどうか精査するよう注文を付ける方針だ。

 政府は来年の通常国会に農協法などの改正案を提出する方針。政府・与党は新成長戦略の策定後、中央会に代わる新制度の設計に入る。JA全中も新たな執行部が発足する今年の夏以降に自己改革の議論を加速する考えだ。ただ、議論の行方によってはJA全中などの影響力が大きく残ることになる。