システムは意外と簡単!? 海外へ不正に金を送る「地下銀行」ってなんだ?

海外へ不正に金を送る「地下銀行」を営んだ疑いで、ベトナム人の男がこのほど、福岡県警に逮捕された。報道によると、男は昨年8月〜11月ごろ、福岡県内のベトナム人4人に頼まれて、計約100万円をベトナムにいる4人の親族のもとへ送金した疑いがもたれている。

それにしても、「地下銀行」とは、なんとも怪しげな響きの言葉だ。そもそも、地下銀行とは、どういった組織なのだろうか。今回、男は銀行法違反(無免許営業)の容疑に問われているというが、どのような理由で海外送金が違法とされているのだろうか。金融関係の法律にくわしい桑原義浩弁護士に聞いた。

●地下銀行は、大規模組織とは限らない

「地下銀行とは、銀行法などによる免許を持たずに、不正に海外送金などを行う業者のことを言います。不法に滞在している外国人が、不法就労や犯罪で入手した資金を母国に送金するために利用している、と言われています」

正規の銀行と、どう違うのだろう。

「正規の銀行から海外送金する場合は、パスポートなどの本人確認が必要となります。ですから、不法就労者などは利用することができません。しかし、地下銀行に依頼すると、数%の手数料を取られますが、資金をプールしている現地に連絡して、現地組織から送金してもらうことができます」

「地下銀行」というと、マフィアなどの大がかりな組織をイメージしてしまうが、どんな風に運営されているのだろう。

「ネットバンキングを使う場合を考えてみましょう。たとえば、ベトナムに口座を設定している者が、不法就労者から送金の依頼を受けて、送金額と手数料を受け取ります。そして、ネットバンキングで自分のベトナムの口座から依頼者の口座に振り込む、ということもできるのです。

地下銀行といっても、個人で行うこともできるので、大規模な組織とは限りません。簡単にできそうですが、銀行法等によって、銀行等以外の者が、為替取引業務(いわゆる送金業務)を行うことは禁止されています」

●無免許の為替取引には刑罰が科せられる

なぜ、銀行以外が海外送金にかかわってはいけないのだろうか。

「不正なお金の動きを防ぐためです。銀行法によれば、銀行法の目的は、銀行の信用を維持し、預金者等の保護を確保することとされていますが、実質的には、不正に得られた利益などが海外に送金されることを防止することにも役立っています」

このように桑原弁護士は説明していた。

無免許による為替取引に対しては、3年以下の懲役または300万円以下の罰金という刑罰が科せられるということだ。システム自体は簡単でも、うかつに手を出すと摘発される可能性があるので、注意したい。