燃料高騰 農畜産物運べない トラック業界 悲鳴

ガソリン価格高騰で、農畜産物を運ぶトラック業界が悲鳴を上げている。レギュラーガソリンの全国平均は1リットル160円を突破、その後も下がらない。軽油価格も上昇、前年に比べて10円も高い水準だ。農畜産物の長距離輸送を請け負う流通業者は「農家や産地に価格転嫁することは難しい」と声を上げ、国に燃料高騰対策への緊急支援を求めている。

・緊急支援国に要請を

 酪農やテンサイの産地、北海道十勝地方の大樹町。(株)大樹貨物の熊代靖広統括部長は、過去5年の燃料代の推移を示す表を見詰め、ため息をついた。

 「もういよいよ、限界だ。企業努力ではどうにもならない」

 JA大樹町が出資する同社は、肥料や生乳、テンサイ、芋といった農産物の輸送の他、燃料ローリー、スクールバスなどを運営する。大型トラックやミルクローリーなど45台を持つ。毎日酪農家から生乳を集荷し、テンサイの収穫が本格化する10〜12月は100キロ離れた工場まで何往復もする。

 2013年度の輸送に関わる支出4億4000万円のうち、燃料代金が5000万円。過去4年間で1500万円程度上昇したという。14年度も5000万円で予算を計上しているが、このまま燃料代が高騰し続ければ、経営を大きく圧迫することになる。

 「農家も燃料はほとんどの農作業で使う。飼料、電気代、資材は全て値上がり、増税もある中での燃料高騰で、経営ダメージは大きい」と同町の酪農家、高橋和弘さん(52)。燃料や電気代、消費税増税など相次ぐ値上げラッシュで農家の経営が厳しいことは、農産物輸送を請け負い、地元密着経営をするだけによく分かる。熊代統括部長は「ただでさえトラック業界は人手不足や車不足にあえいでいる。燃料高騰が追い打ちをかけ、今、業界ではどれくらい生き残れるのかが話題になっているほどだ。このままだと農畜産物の流通の仕組みが変わってしまう」と不安を募らせる。

 経済産業省によると、レギュラーガソリンの小売価格は、5月12日時点で全国平均165.4円、軽油は143.8円。ガソリンと軽油は同様な変動傾向を見せ、前年度に比べていずれも10円以上も高い。原油価格が高騰した08年以来の高値水準だ。

 高騰の大きな背景が増税。地球温暖化対策税が消費税と同時に増税され、地球温暖化対策税ではガソリンや軽油に1キロリットル当たり250円上乗せされた。

 日本エネルギー経済研究所石油情報センターは「増税が最も大きい要因だが、ウクライナ情勢など国際情勢不安による原油高、為替の円安傾向など複数の要因が重なっている」と分析。08年時はリーマン・ショックの発生で急激に価格は下落したが、今回は「しばらく燃料高は続くのではないか」(同センター)とみている。

 燃料高は全国の流通業者が対応に苦慮している。全日本トラック協会は「農産物を運ぶトラックなど大半が中小の零細企業。同じ距離を走ってもコストが全く異なり、かなり経営を圧迫している」(企画部)として、政府の抜本的な支援を求めている。

 全日本トラック協会は自民党トラック輸送振興議員連盟など政府・与党に対し、緊急支援の要望を続けている。