企業決算 消費税駆け込み需要の影響は?

4月から消費税が増税となりましたが、市場では企業の決算に与える影響について注目が集まっています。消費税の増税と、それを前提にした駆け込み需要は、企業の決算にどのような影響を与えるのでしょうか?

 日本企業は圧倒的に3月決算というところが多く、消費税が増税となった4月以降の数字は来年度の決算に反映されることになります。したがって前期(2014年3月期)の決算は、基本的に駆け込み需要によるプラス要因のみということになります。

消費税の駆け込み需要といっても、商品の種類や価格によってその影響は様々です。もっとも影響が大きいのは住宅や自動車などの高額商品ですが、こうした商品は、比較検討や購入手続きに時間がかかり、3月に入ってからではもう間に合いません。つまり駆け込み需要はかなり以前から発生しており、すでに第2四半期や第3四半期の決算に反映されているわけです。最終的な通期の決算で大きなサプライズがある可能性は少ないでしょう。

 一方、日用品については3月の駆け込み需要が大きくなる可能性があります。消費財のメーカーや小売などでは、通期の決算で思わぬ増収となるところが出てくる可能性もあります。

 むしろ多くの市場関係者が気にしているのは、消費増税後の景気の落ち込みです。これはまだ先の話ですが今期(2015年3月期)の決算に大きな影響を与えることになるわけです。決算期が2月であることから、ちょうど3月末に決算発表のタイミングとなったニトリでは、2015年2月期の業績について、通期では増収増益としたものの、前半の半期決算については減益となる見通しを明らかにしました。

 政府では消費増税の影響を最小限にするため、公共事業の前倒し発注を実施する予定です。2014年度予算における公共事業費と2月に可決成立した2013年度補正予算を合わせた約12兆円を年度の前半に集中して執行します。OECDによる4半期経済見通しによれば、2014年における日本の実質GDP成長率は、4〜6月期はマイナス2.9%、7〜9月期は1.2%と予想されています。12兆円の公共事業を前半に集中させれば、理論的には4%ほどGDPを押し上げることが可能となりますから、4〜6月期のGDPをプラスにすることも不可能ではありません。全体としてみれば、反動による強烈な景気の落ち込みは回避できそうな状況です。

中長期的に見れば増税の影響は景気に対してほぼ中立といわれています。増税した分は政府の歳入となり、最終的には政府支出や財政再建という形で国民に返ってくるからです。初めて消費税が導入された1989年はバブル経済期ということもあり、消費増税の景気への影響はほとんどありませんでした。一方、3%から5%に増税された1997年は増税後に景気が腰折れしています。ただ、これについてはアジア通貨危機など外部要因が大きく、明確に消費税の影響とは言えない部分があります。

 ただ、中長期的には中立といっても、増税によって見かけ上の価格が上がる心理的な影響は無視できません。来年には10%への増税も検討されていますから、個人消費の意欲が削がれることで、小売りなど関連企業の決算には影響が出てくることになるかもしれません。