消費増税 「今月注文でも8%?」ネット通販で戸惑う「時差」

消費税が5%から8%に引き上げられるまで25日で残り1週間。増税間際の駆け込み需要は3%から5%に上がった平成9年の時と同じだが、今回は消費者の購買方法の多様化で一筋縄ではいかない事態も生じている。パソコンからインターネットを通じた注文が、当時の約60倍に成長した通信販売が直面しているのは、注文から商品が手元に届くまでの“時差”だ。「この場合は5%? 8%?」。公的な相談窓口には、そんな問い合わせが殺到している。

 「3月中に注文すれば税率5%で買えるんじゃないの?」。月に少なくとも1回はインターネットで日用品から家具までさまざまな買い物をするという茨城県つくば市の看護師、西塚弘子さん(38)。使い慣れたネット通販だったが、3月上旬に、増税を見越してティッシュやキッチンペーパーを普段より多めに買おうと注文しようとしたところ、迷いが生じた。

 注文の手続き中に出てきた画面には「3月中の注文でも税率が8%になる場合がある」という注意喚起の文字。心配になって周囲に相談し、結局、ネットで買うのはやめた。5%なのか、8%なのか−。内閣府の消費税価格転嫁等総合相談センターには開設された昨年10月以降、相談が増加。西塚さんのように、ネット注文の際に税率がどうなるのか戸惑っている人は多い。

 国税庁の担当者によると、税率が変わるのは、商品の「引き渡し日」が基準になる。引き渡し日が3月中なら税率5%の価格で、4月以降であれば8%。通販の場合、商品は宅配業者を介して利用者に届けられるケースが多いので、引き渡し日は、こうした宅配業者に商品が渡る「出荷日」や「発送日」が基準になっている場合がある。

 3月中に注文しても、4月以降の発送になれば、8%の税率がかかることもある通販。ネット通販も手がける酒類小売業「カクヤス」(東京)では、「税率5%の3月中に発送してほしい」という利用者からの注文が3月初めから急増しており、いまも続いている。しかし、担当者は「今、注文を受けても、在庫切れで4月以降にしか出荷できない商品が増えている」と明かす。19日以降は入荷状況が不安定になるとの予測から、一部の商品については一時的に販売を停止する対応も取るようにしているという。

 「旧税率で記載された商品を注文した場合でも、発送日が4月以降の場合は、増税分を後から請求される場合があります」。約6万店が出店する「ヤフー!ショッピング」を運営するネットの検索大手「ヤフー」(東京)では、ホームページで特集を組むなどして昨年12月から利用者に注意を呼びかけてきた。31日夜から翌朝にかけては、税率8%の表示に変更するために大幅なメンテナンスを行う予定だ。

 一方で、日付が4月1日に変わるまでに注文を確定すれば税率5%で買い物できる店も。内閣府幹部は「店によって税率転嫁のタイミングが違う場合があるので、注文時によく確認してほしい」と話している。相談は、消費税価格転嫁等総合相談センター((電)0570・200・123)へ。

 ネット通販同様、注文から発送までに時間がかかる家具は、単価が高いこともあって税率5%のうちに購入しようとする消費者は多い。大型家具店の中には、混乱を避けようと、一定の条件付きで4月以降に発送する品物も税率5%で販売する店が出てきた。家具店「ルームズ大正堂」(本社・東京)は、これまで、リフォームや引っ越しをする客の都合に合わせて注文を受けてから一定期間、購入した家具を預かるサービスを行ってきた。

 増税前の今も同サービスを続けており、3月中に注文を受け、価格の10%以上を手付金として支払った商品なら4月以降の発送でも税率5%で販売している。預かり期間は最長で購入日から1年。21日からの3連休に横浜市で行われた販売会は連日かつてない長蛇の列ができた。担当者は「ずっとやってきたサービスだから続けているだけ」としながらも、「予想以上の大盛況」と声を弾ませる。

 別の大型家具店でも3月中の注文なら5%の価格で販売。担当者は「3月中の注文でも5%の人と8%の人がいては納得してもらえないことがある。配送センターが混んでいて、こちらの都合で納品できない現状もあるので、対応を取ることにした」と明かした。