Apple vs. Samsungの特許戦争は今どうなっている?

スマートフォンやタブレット端末における知的財産権をめぐって激しい訴訟合戦を繰り広げてきた米アップルと韓国サムスン電子ですが、さらに激しい訴訟に発展する可能性が高くなってきました。

 もともとのきっかけは、アップルが2011年4月、サムスン製のスマートフォンがアップル社の知的財産権を侵害しているとして、米カリフォルニア州の連邦地方裁判所に提訴したことです。その後、双方が各国で互いを提訴する状態となり、10カ国で数十件近くの裁判が行われてきました。状況は一進一退で、韓国での裁判は引き分け、英国ではサムスンが勝訴、日本では一部でサムスンが勝訴といった具合です。しかし世界でもっとも注目されているのは、賠償金額が巨額である米国の訴訟といってよいでしょう。

 2012年8月、カリフォルニア州連邦地裁の陪審団は、アップルが主張したサムスンの特許侵害を一部認め、10億5000万ドル(約1080億円)を支払うよう命じました。その後、賠償額の再計算があり、最終的には9億3000万ドル(955億円)で金額が確定しています。しかしこの内容はあくまで賠償金の支払いだけであり、アップルが求めていた恒久的な製品販売の差し止めは認められませんでした。裁判所の勧めでアップルとサムスンは調停のテーブルにつき、アップルのティム・クック最高経営責任者と、サムスンのスマホ部門トップの申宗均(シン・チョンギュン)社長が会談しました。しかし交渉は物別れに終わり、結局合意することができませんでした。3月末から再び裁判になる可能性が濃厚となっています。

 再開される裁判では、サムスンの新しいスマートフォンである「ギャラクシーS3」も対象になるといわれています。新型の製品が対象になった場合、賠償金額がさらに跳ね上がる可能性があります。

 アップルは基本的にサムスンがiPhoneなどをコピーしているというスタンスです。訴訟の対象となっているのは、本体のデザインやiPhoneのアイコンの配置などかなり根源的な部分です。また特許侵害についても、指2本でズームする機能など、これがないと製品として成り立たないものが多数含まれており、サムスンとしてもそう簡単には譲れない内容となっています。

アップルがサムスンに対して販売差し止めまで求めているのは、強引過ぎる印象がありますが、両社のこれまでの経緯を考えれば必ずしもそうとはいえません。もともとサムスンはiPhoneに対する部品供給企業として成長してきたのですが、その後、アップルに部品を供給しながら、一方ではアップルと直接競合する製品を出すことで現在に至っているのです。アップルにしてみれば、多少、裏切られたという感覚を持っているかもしれません。

 俯瞰的に見れば、攻めのアップルに守りのサムスンという図式になります。特許侵害が認定されれば、サムスンは賠償金を支払わなければなりません。サムスンがアップルに対して行う対抗訴訟によって、最終的に差し引きされた賠償額をどれだけ抑制することができるかがサムスンにとってのポイントとなりそうです。