生活保護費から天引き徴収 不正受給64人 大阪・八尾市、領収書偽装

20140106-00000094-san-000-6-view生活保護の不正受給者に費用を返還させる手続きをめぐり、大阪府八尾市が受給者の月々の保護費から返還額分をあらかじめ差し引く「天引き徴収」を行っていたことが6日、分かった。現行制度では認められていない行為で、市は自主的に返還を受けたように領収書を偽装。職員が受給者から預かった印鑑を勝手に押印していた。こうした不適切な事務手続きは10年以上続けられ、昨年12月時点で64人分の印鑑を市が管理していた。

 市は「受給者の手間を省くための行政サービスだった」と説明しているが、職員が領収書に押印する行為は公文書偽造に当たる可能性もあり、大阪府は市に是正を指導した。

 生活保護法は不正受給が明らかになった場合、自治体が不正分の費用を徴収できると規定。返還金は市の口座に入金してもらうか、窓口に直接現金を持参してもらう方法で回収する。

 受給者がいったん保護費を全額受け取ってから自主返納する決まりで、強制徴収は認められない。

 ところが八尾市では10年以上前から、市職員が一部の不正受給者の手続きを代行。まず話し合いで月々の返還額を決めたうえで職員が受給者の印鑑を預かり、職員が受給者に代わって領収書に押印▽返還額分を市の口座に入金▽残額を保護費として支給−という事実上の天引きを行っていた。市は受給者印の管理について「口頭で同意を得た」としているが、同意書は交わしていなかった。

 市は「体が不自由だったり、仕事が多忙だったりする不正受給者の事情を考慮して実施していた」と納付の代行であることを強調し、違法な天引き徴収には当たらないとしている。一方、監督する府は「不適切な手続きで、印鑑を預かることも他の不正を誘発しかねない」と改善を求めた。