銀座ルノアールの逆襲「勝ち抜く」 フランチャイズの郊外型店舗に挑戦

20131212-00000000-fsi-000-3-view老舗喫茶店「喫茶室ルノアール」を展開する銀座ルノアールの逆襲が始まった。14日に郊外型の新たな店舗「ミヤマ珈琲」2号店をさいたま市に開店する。さらに同県内に数店舗出店するほか、来年3月からは同社初のフランチャイズチェーン(FC)化に挑む。年間20店舗以上出店し、早期の200店達成を目指す考えだ。ファストフードや外資系コーヒーチェーンの台頭、コンビニコーヒーの大ヒットなど、長く続く劣勢をはね返せるか。

 「フレンチトーストにしようか、それともマフィンかな」。平日の午後、ほぼ満席となったミヤマ珈琲1号店(埼玉県朝霞市)の店内は、メニューを手に相談する親子、入り口で10紙程度の新聞や数十冊の雑誌からどれを読もうか選ぶ年配の男性、主婦グループや参考書を広げる高校生でにぎわっていた。

 大都市の駅前にあり、サラリーマン客中心の喫茶室ルノアールの雰囲気とは異なるファミリーレストランのような広々とした明るい店内。小宮山文男社長は、「地域のコミュニティー作りを支える役割を担いたい」と店舗作りの狙いを説明する。

 お手本は名古屋発で急速に店舗を拡大した「コメダ珈琲店」だ。ファミリー向けに食事メニューやスイーツを充実し、広い駐車場を設けた郊外型店舗をFC展開。現在500店を超える。

 まだ2店舗目のミヤマ珈琲にとってライバルは手ごわいが、「十分戦える」と小宮山社長。1号店を開店した昨年12月から1年間、ノウハウがなかった郊外型店の客の動きや好みについて徹底的にデータを収集した。「メニューや厨房(ちゅうぼう)などの設備に細かな変更を加え続けた。手応えはある」(小宮山社長)

 コミュニティー作りの支援として、コーヒーや編み物、写真などの教室を店内で開催する予定だ。車で来店する客が中心のコメダに比べ、徒歩や自転車など、もう少し狭い範囲で地域客のリピーター確保を目指す。

 FC店募集は来年3月からだが、「すぐにやりたいという問い合わせが複数ある」(同)。当面は直営店を展開する埼玉県内を中心に募り、その後全国に展開する。

 喫茶室ルノアールは昭和の喫茶店の代名詞的存在。だが、「1997年の消費税増税後のデフレで風向きが大きく変わった」(同)。安価な立ち飲みコーヒー店やファストフード店の急増に加え、米スターバックスなどの外資系チェーンが台頭。ルノアールを含め、価格は高めだが本格的なコーヒーとくつろぎの空間を提供する「いわゆる“フルサービス”の喫茶店は打撃を受けた」。喫茶室ルノアールの店舗数は、ピーク時の120店強から80店弱に減った。

 銀座ルノアールも手をこまねいていたわけではない。店舗を大正ロマン風に全面改装し、セルフサービスの「ニューヨーカーズ・カフェ」を展開するなど、生き残りを図ってきた。

 そして昨年、ミヤマ珈琲で郊外型店舗に参入。今年1月にはコーヒー卸大手のキーコーヒーと資本・業務提携した。直営店中心の方針を転換し、キーコーヒーの豊富なノウハウも活用してFC展開による店舗拡大にかじを切ることにした。

 最近ではセブンカフェなどコンビニコーヒーが大ヒットし、“コーヒー戦争”はさらに激化。しかし、コーヒー消費量が今年、過去最高に迫る勢いに、小宮山社長は「市場が広がった」とむしろ歓迎する姿勢だ。「競争は厳しいが勝ち抜く」と自信を示す。