年賀状は氷山の一角…“自爆営業”常態化のブラック業種

20131123-00000015-nkgendai-000-2-viewリュックサックに詰めた年賀はがきの束を取り出し、金券ショップのカウンターに置く……。

 日本郵便が職員に突き付ける年賀状の営業ノルマは、1人3000〜1万枚ほど。ノルマをこなせない職員は自腹で買い取り、1枚50円のはがきを金券ショップに40〜44円で流すしかない。これを“自爆営業”という。

 だが、これまで親方日の丸の郵便局員が知らなかっただけで、自爆営業はどの業界、業種でも横行している。

 ブラック企業アナリストの新田龍氏が言う。
「よくあるのは旅行会社の旅行券や飲食店の食事券で、金券ショップにある商品は大抵、“自爆営業”が関係していると考えていい。自腹で買わされた旅行券などを金券ショップに持ち込み、ダメージを少しでも軽くするのです。中小の旅行代理店では、企画したツアーにノルマを設けていて、営業できなかった社員が10万〜20万円ほどの自腹で家族を連れていくと、一般客はゼロに近く、“社員旅行状態”ということもよくあります」

 生保の営業社員の大部分は、新商品が出るたびに自腹で家族が加入する。そうしなければ、とてもノルマはこなせず、毎月の保険料が15万円を超える人もいる。

 アパレルの自社製品購入はよく知られているが、毎月1万〜2万円“天引き”されるのはきつい。

 活字離れの昨今、書店員は雑誌の購入を迫られる。
「読みたくもない週刊誌が部屋に山積みです」(店員)

100万円のクルマを買わされた損保マン

自社製品の購入だけではない。弱い立場を利用され、取引先の製品を買わされるケースもある。

「取引先が多いと、社内でリストが回って、いくつか選ばなければいけません。それで、ある損保の社員は、車を買わされた。いくら割り引いてもらっても100万円を超える出費ですよ」(新田氏)

 取引先が迫る“自爆”で、ファミリータイプの大型冷蔵庫を20万円で買わされた独身男性もいるし、不要な高級羽毛布団を25万円で引き取らされた人もいるという。

「断りたいが、取引先の相手にも営業ノルマがあり、涙目で“○○君、1台頼めないか”と言われると、つい同情してしまって……」(部品メーカーの30代社員)

 ネットオークションで転売する手もあるが、どちらにしてもなかなか買い手はつかない。
 自社製品にしろ、取引先の商品にしろ、社員に“自爆営業”を義務付けるのは違法。それをしない社員を不当に扱うのも違法だ。

 だからといって、“自爆”に困った社員が会社に文句を言うと、リストラの対象にされて立場が危うくなる。イヤな世の中だが、それが現実なのだ。