ビートたけしが、父の9年間に及んだ介護を語る。告別式で、家族は…。

国が推し進める「家族で支える介護政策」を支持する国会議員や有識者と、「今の日本で在宅介護は難しい」と訴える介護経験者を中心とする一般市民。両者の主張には大きな隔たりがあり、テレビ番組の企画で介護問題を扱っても議論は平行線のままになることが多い。お笑いタレントのビートたけし(66)は浅草の芸人見習い時代、脳梗塞で倒れた父の介護を手伝っていた。9年間にも及んだという介護が終わった時、家族はどう思ったのだろうか。

11月18日放送の『ビートたけしのTVタックル』(テレビ朝日系)“医療&介護のヒミツSP”に出演していた元厚生労働副大臣の武見敬三参議院議員が、「伝統的家族制度で介護は上手く出来る」と主張した。昔のように病院で最期を迎える寸前までは、自宅で家族に介護を担ってもらう。在宅介護の支援を充実させれば家族の負担も軽くなり、現在全国で42万人の待機者がいるといわれる特別養護老人ホーム(特養)の利用者も、減るだろうという。だが、この意見には実際に親の介護を経験した出演者から異論が出され、ツイッター上にも「政治家の話が、一番現場とかけ離れている」との批判が多かった。

激論が続く中、司会のビートたけしが1977年に亡くなった父親の介護について語り出した。脳梗塞で倒れた父親は約9年間、入院生活を送っていたそうだ。長期入院が可能だった時代だが、今のように完全看護ではない。病人の身の回りの世話は付添い人を頼むか、家族が担わなければならなかった。

当時、大学には通学せず芸人を目指して浅草で修行中だったたけしも、父親の世話をするため朝の6時に病院へ行ったという。下の世話と朝食を食べさせるのが、彼の担当だったのだ。その後病院を出てから演芸場が始まる午前11時まで、喫茶店で時間を潰す。他の時間は兄や兄嫁らが交代で、父親の面倒を見ていた。そして父親が亡くなった告別式では、悲しみより長い介護生活から介抱された安堵感と開放感が家族の間に流れていたそうだ。「(父親には)失礼だけど…」とたけしは淡々と語る。

番組の最後に、たけしは“一番大事なのは、各個人が自分の生き死にを早い段階で考えておかなければならない”ことだと、締め括った。親の介護はもとより自分の老後についてのビジョン、そして早めの準備が今の日本では必要だということか。