1基1000万…「標識ブイ」衝突多発、沈没も

20131120-00000233-yom-000-1-view北九州市と山口県下関市を隔てる関門海峡で、航行安全のために設置した「灯浮標(とうふひょう)」(ライトブイ)と呼ばれる航路標識に、船舶が衝突する事故が多発している。

 海峡内には計34基の灯浮標を設けているが、昨年だけで9回衝突されたブイもあり、補修費の負担も大きい。第7管区海上保安本部(北九州市)は、海運会社などに注意を呼びかける一方で「有効な手立てがない」と頭を悩ませている。

 ◆難所のカーブ

 下関市・長府漁港の南東約1・6キロにある「第35号灯浮標」。2001年に設置され、09年頃から被害が目立ち始めた。同年以降の5年間で、海峡内のブイは計39件の衝突被害に遭ったが、17件がこの35号に集中している。件数が最も多かった昨年は18件中9件、今年も10月末時点で4件中2件を占めている。

 ブイは海面からの高さが約5メートルもあり、夜間はLED(発光ダイオード)が点滅し、航路であることを船舶に示す。しかし、相次ぐ衝突で、度々沈没させられた。10月20日未明も、福岡市の海運会社が所有する押船が35号に衝突し、海中に沈んだ。現在は仮設のブイが置かれている。

 35号は瀬戸内海から関門海峡を西へ向かう船舶が左カーブする位置にある。航路内は右側航行が原則。7管は、船舶が逆流を受け航路外に押し流されたままカーブするため、衝突事故が発生しやすくなっているとみる。ただ、最近になって急増した原因は不明という。

 ◆当て逃げ被害

 ブイの損傷による経済的損失も大きい。通常は加害船側が補修費などを負担するが、当て逃げされて加害船を特定できない場合は海保が支出することになる。

 09年以降に発生した衝突事故39件のうち、ほぼ半数の19件は加害船を特定できておらず、7管は器物損壊容疑などで捜査している。同型のブイを新規購入すれば、1基当たり約1000万円は必要という。