NHK受信契約「通知後2週間で成立」判決確定 徴収活動にどう影響?

NHK受信料の支払いを拒んでも、テレビを設置していればNHKの通知後2週間で受信契約が成立することを初めて認めた東京高裁(難波孝一裁判長)の判決(10月30日)が確定したことが18日、分かった。NHKによると、未契約世帯は昨年度末の推計で約23%に当たる1081万世帯。「自動成立」を認めた判決は今後の受信料徴収に大きな影響を与える可能性があるが、識者からは「半強制的な手法は公共放送にそぐわない」との声も上がっている。

 判決によると、NHKが契約締結と受信料支払いを求めたのは神奈川県相模原市の男性。男性は代理人弁護士を立てずに訴訟に臨み、「テレビは東日本大震災で壊れた」などと主張していた。

 1審横浜地裁相模原支部(小池喜彦裁判官)は6月、証拠がないとしてテレビの故障を認めず、「契約締結を命じる判決が確定した段階で契約が成立し、受信料の支払い義務が生じる」と認定した。ただ、契約締結時期は「申し込みから遅くとも2週間」とするNHKの主張は認められず、NHK側が控訴。高裁はNHKの主張を全面的に認め、「判決確定まで契約が成立しないのは受信料を支払っている人との間で不公平」と判断した。

 NHK広報部は「放送法の定めに沿った適切な判断」とコメント。今月13日の会長定例会見で担当者は「今回の判決は個別の事案について契約成立が認められたもの」として、契約手続きの変更など、今後の徴収活動全般への影響については否定的な姿勢を示している。

 ただ、別の受信契約訴訟で被告側代理人を務める高池勝彦弁護士は「今回の判決を受けてNHKが徴収を強化する可能性はある。ほかの訴訟でも高裁と同様の判断が下されるかもしれない」と指摘。放送ジャーナリストで放送批評懇談会常務理事の小田桐誠さん(60)も「NHKの現場スタッフが、判例を説得材料にして契約を求めることはありうる」とした上で、「支払い義務を強調するだけでは視聴者の反発を招き、公共放送への理解を得られないだろう」と話す。

 放送法はテレビを設置した世帯に受信契約を義務づけており、NHKはこれに基づき総務大臣の認可を受けて規約を設け、受信料の支払い方法などを定めている。昨年10月から受信料が月額最大120円値下げされたこともあり、NHKは契約率向上に力を入れ、未契約世帯を相手取り同様の訴訟を76件起こしている(10月25日現在)。

 東京地裁で先月出た判決では、東京都世田谷区の男性が「放送法の規定は契約の自由を侵害している」として憲法違反を主張したのに対し、中村慎裁判長は「義務付けには必要性と合理性がある」として退けた。過去には、受信料は双方の合意に基づく「契約」ではなく、NHKに徴収権を認めた「特殊な負担金」とする判断も示されている。

 前出の高池弁護士は「放送法もNHKの規約もおおざっぱで、民法や憲法との兼ね合いなどについて議論すべき点は多い。見直しも含めて整理し直すべきだ」と話している。