証券優遇税制の廃止、持っている株は売るべき?

20131112-00000002-wordleaf-000-3-view来年の1月1日から証券優遇税制が打ち切りとなり、株式の売却益や配当に対する課税が10%から20%に引き上げられます。今、株式を保有している人はどうすべきなのでしょうか?

売り買いのタイミングの決め方

結論から言うと、税制が変わるからといって株式の売りタイミングを変更する必要はありません。また過去の例を見ても、税制の変更によって株価は下がっていません。あくまで株価の売り買いは、景気や業績、株価の動きなど、本来の基準で決定すべきものといえるでしょう。

 もともと20%であった税率を10%に引き下げるというこの優遇税制は、金融危機も危惧されていた2003年当時、緊急の時限措置として導入されたものであることを理解しておく必要があります。その後、毎回延長が繰り返され、ここに来てようやく元の状態に戻ったわけです。政府がこの減税措置の打ち切りを決め、証券業界もそれほどの猛反発をしなかったのは、株価が以前のような状況に戻ってしまう可能性は少ないと多くの人が考えているからです。

 また、この証券優遇税制の打ち切りと入れ替わりで「少額投資非課税制度」(通称NISA)が始まります。こちらは年間100万円までの投資であれば、株式や株式投資信託の譲渡益や配当にかかる所得税が非課税になる制度です。少額投資ということで投資家の裾野を広げ、新たな投資を呼び込むことが期待されています。この制度の開始も株価が下落しないだろうと予想される理由のひとつといえそうです。

過去の税制変更では株価が急上昇

税制の変更は株価にそれほどの影響を与えないということは過去の事例から明らかになっています。これまで証券税制が大きく変わったのは1989年と2003年の2回です。1989年の改正ではこれまで非課税であった売却益が課税対象となりました。非課税が課税対象となるわけですから、これは相当なインパクトです。

 2003年には、今回の10%への引き下げと同時に、申告分離課税に一本化されました。それまでは、売却益が出た場合、その利益の26%を税金として支払うか、売買代金の1.05%を支払うかのどちらかを選択できる方式でした。売却益が大きい場合には、後者の方が圧倒的に有利です。この時の制度変更は、26%が10%に減税されるというよりも、むしろ今回と同じように増税されるという印象が強かったのです。

両者とも多少の売りは生じましたが、税制の変更後、株価は急上昇しています。1989年はバブル経済の頂点でしたし、2003年は2007年までの株価急上昇のスタート地点でした。要するに市場の環境さえよければ、税制の変更などほとんど関係ないのです。ただ、税制とは別に、日本の株価が失速するような事態となれば、税制の変更はそのひとつのきっかけになるかもしれません。あくまで投資は、投資対象の状況で判断すべきものなのです。