出直しLCC、バニラ・エアは飛躍できるか

20131103-00023267-toyo-000-5-view格安航空会社(LCC)「エアアジア・ジャパン」のラストフライトがあったのは10月26日のこと。それから6日を経た11月1日、エアアジアは社名を「バニラ・エア」へとあらため、新たなスタートを切った。

 11月1日から販売を開始した航空券の価格は、いずれも東京(成田)―札幌(新千歳)線が最安5500円、沖縄線が同7500円、ソウル線が同8000円、台北線が同1万円(いずれも片道)。11月3日までの3日間は、席数限定ながら4路線とも片道1000円の特別運賃で販売する。

 生まれ変わったバニラ・エアのコンセプトは「シンプル」「エクセレント」「ニュー・ベーシック」。石井知祥社長は「これまでの反省を生かし、お客様の声を踏まえて、シニアやファミリーにも使いやすいLCCにした」と、力を込めた。

エアアジアはなぜ苦戦したのか

前身のエアアジア・ジャパンは2011年8月、ANAホールディングス <9202> とマレーシアのLCC大手エアアジアとの合弁で発足。その1年後に国内2路線でスタートを切った。だが、開業初年度にあたる2013年3月期は36億円の純損失となるなど、その船出は厳しいものだった。 今年6月には、経営方針の相違などからエアアジアとの合弁を解消。ANAの100%子会社となり、10月26日にラストフライトを迎えた。

石井社長が口にした「これまでの反省」とは、エアアジア・ジャパンが苦戦した理由と重なる。その最たる点が「ホームページの使いにくさ」だ。

 経費節減が至上命題のLCCにとっては、旅行会社を通さず、自社のWebサイトで航空券を拡販することが極めて重要。しかし、エアアジア・ジャパンの場合、「ホームページがわかりにくく、動作も重かった」(同社幹部)。そのためにまとまった数の利用者を取り逃してしまったであろうことは、想像に難くない。

自社サイトはシンプルにわかりやすく

だから、バニラ・エアのホームページでは、何よりもシンプルでわかりやすくすることを心がけた。

 文字のサイズは一般的なニュースサイトのような大きめの文字とし、行間にもゆとりをもたせた。

 トップ画面に予約パネルを置いたほか、運賃情報、空港へのアクセス、「バニラ・バケーション」という名のANAが企画した旅行商品へのリンクなどを配置した。

 また、ホームページの上部には5つのタグをつけて、LCC初心者向けの使い方解説、運賃プランの詳細な説明、予約からチェックインまでの手順解説などを配置。利用者が必要としそうな情報に簡単にたどり着けるよう工夫した。

 航空アナリストで帝京大学非常勤講師の鳥海高太朗氏は、「エアアジアの頃はWebがダメダメだったが、バニラは想像以上に使いやすくなった。ANAとのコラボレーションで集客する流れもできた。成功する可能性は高い」と分析する。

エアアジア時代のもう一つの大きな反省点が、「定時運航率の低さ」だ。

 一定規模の単一機材(同一の機種)をいかに多頻度運航して有効活用できるかが、LCCを経営していくうえでの重要なポイント。逆を言えば、一つの便が遅れてしまうと、それ以降に続く便がドミノ倒しのように遅延してしまい、それだけ欠航も生じやすくなる。

 実際、エアアジア・ジャパンは就航当初、運航オペレーションの不手際もあって定時に発着できない便が多発した。

 その結果、成田空港の“門限”である23時(条件付きで24時まで離着陸可能)を過ぎてしまい、欠航となる便も出た。遅延が多発してしまったことが、苦戦の一因であることは間違いない。

定時運行85%を目指す

石井社長は「エアアジア・ジャパンの定時運航率は70%台半ばだったが、バニラ・エアでは85%を目標に引き上げていく。欠航率も1%未満に抑えたい」と意気込む。

 エアアジア時代の最大の弱点だった自社サイトには、改善のメドがついた(初日の11月1日にはチケット申し込みが殺到したためか、繋がりにくくなる状況が発生したが、2日には改善している)。

 次なる課題は、運航オペレーションの精度を高めることで定時運航率を引き上げられるかどうか。バニラ・エアとして運航を開始するのは12月20日。その初便からの1便1便の積み重ねが重要になる。