米連邦航空局、全飛行段階での電子機器使用を解禁へ

米連邦航空局(FAA)は31日、飛行中のタブレット端末や電子ブックなどの小型電子機器の使用制限を解除し、年内に全ての飛行段階で使うことができるようにするとの方針を発表した。

 このFAAの決定は、使用制限問題について諮問していた専門家グループの勧告を受け入れたもので、使用制限の是非に関する長年の議論に終止符を打つ形となる。FAAはこの新方針を実行するためのガイドラインを間もなく各航空会社に提供する。

 現行の飛行規則は、高度1万フィート(3048メートル)未満での全ての電子機器の使用を禁じている。しかし新規則の下では、乗客は飛行機の搭乗から降機までの全段階でタブレットや電子ブックなどの携帯電子端末が使用可能となる。ただノートパソコンなどの大型機器は離着陸の際に座席の下などにしまう義務がある。

 新規則では、乗客は1万フィート未満でスマートフォン(スマホ)での映画や音楽の視聴、また飛行機が高速無線LAN(構内通信網)の「Wi-Fi(ワイファイ)」を提供している場合はそれへの接続が可能となる。ただ、携帯電話については電源を切らなければならない。

 フォックス運輸長官は新規則について「この決定はわれわれの安全性確保への強固な意志と、全飛行段階での電子機器使用に対して高まっている乗客の要望を同時に満たすものだ」と述べた。

 各航空会社については、この1万フィート未満の解禁を実施する前に、乗客の使用機器から発生するいかなる電波にも飛行機が影響されないようにするための5段階の措置を取ることが義務付けられる。FAAは、これらの措置の具体的な実行計画は各航空会社によって異なるものの、多くの社が年内に全飛行段階での機器使用をできるようにするとみている。フエルタFAA長官は「乗客が(どの会社の飛行機でも)同じようにできるよう(各社に)促す」とし、「この措置が極めて短時間で実行される」はずだと述べた。

 航空各社は、この解禁措置利用の1番手となってマーケット戦略上優位に立つことを目指して既に動いている。

 例えば、デルタ航空は既に航空機の電波耐性テストを完了しているとし、FAAの認可さえ下りれば「11月1日にも1万フィート未満での携帯用端末の使用を乗客に認める準備ができている」という。

 一方、格安航空会社のジェットブルーは、解禁準備の5段階の第1段階を終えて第2段階を実行中とした。同社のロビン・ヘイズ最高商務責任者(CCO)は「わが社は電子機器が全飛行段階で使える米国で最初の航空会社となることを目指している。それに向けて既に今日からFAAの認可取得手続きに入った」と語った。

 ただ、各航空会社とも全段階での電子機器利用をいずれは可能にすることが予想されるものの、現時点では全段階でWi-Fi機能を提供できる能力には各社によって大きな差がある。

 ジェットブルー、格安航空大手サウスウエスト航空、ユナイテッド・コンチネンタル・ホールディングスはこのWi-Fi競争では勝つ可能性が高い。この3社が装備しているWi-Fi機能は、どの飛行高度でも作動するためだ。

 しかし、Wi-Fi接続可能な全米約2100の商用機の約4分の3にWi-Fi機能を提供しているゴゴ・インク社によると、同社のWi-Fiは1万フィート未満で機能するようには設計されていない。同社のWi-Fiは競合他社のように衛星を使うのではなく地上のタワーを使って接続を提供しているからだ。このため同社Wi-Fiを使うデルタ航空、AMR傘下のアメリカン航空、USエアウェイズ・グループ、アラスカ・エア・グループは離陸から着陸までの間は乗客にインターネットサービスが提供できないことになる。

 また、予想された通り今回の新規則では乗客が携帯電話で通話することを禁じる条項が残った。連邦通信委員会(FCC)が飛行中の携帯信号を発することを禁じているためだ。

 FAA担当者は、この新規則の施行後は1万フィート未満で電子機器の電源を切ることを要求されるのは、視界が悪化し着陸機器システムの作動の障害となる恐れのあるケースで、それは全飛行数の1%程度と推定されるとした。