笑い止まらぬKDDI好決算の先行き

通信大手のKDDI <9433> は10月28日、都内で会見を開き、2013年度上半期(4〜9月期)決算を発表した。売上高は前年同期比18.0%増の2兆0537億円、営業利益も同50%増の3476億円で、いずれも大幅な伸びを示した。特に売上高は、上半期では初の2兆円超えとなった。 上半期は主力事業が軒並み好調だった。従来型の携帯電話からスマートフォンへの買い替えが進んだことや、より高単価なLTE契約の増加によって、モバイルの通信料収入は前年同期より443億円増加。スマホとのセット割引「スマートバリュー」を軸に契約数が伸び、固定回線の通信料収入も188億円増えた。さらに、今年4月から連結子会社化したケーブルテレビ大手、ジュピターテレコム(以下、J:COM)の売上高1740億円も上乗せされた。

損益面では、スマホの拡販に伴って端末の調達費用や販売手数料など営業費用は増加したが、増収効果で軽くのみ込んだ。これに加えて、J:COMの営業利益347億円も貢献した格好だ。

■ ドコモのiPhone参入にも動じず

 上半期の好決算を受けて通期業績の上方修正も期待されたが、KDDIは期初予想を据え置いた。「まだ年末商戦も控えている。iPhoneの在庫が潤沢になれば、(競合他社との)競争も厳しくなる可能性がある。状況を見極めなければならない」(田中孝司社長)との判断からだ。

 とはいえ、下半期の好調維持にも抜かりはない。プラチナバンドである800メガヘルツ帯を活用したLTEのアピールに加え、アンドロイド端末の販売促進、前述のスマートバリュー、月額390円でさまざまなコンテンツが使えるauスマートパスにおけるO2O(ユーザーをオンラインからオフラインの実店舗に誘導するプロモーション)ビジネスの本格化など……。矢継ぎ早にサービス面の拡充策を打ち出す方針だ。

気になるのは、9月の新型iPhone発売以降の販売動向だ。NTTドコモ <9437> が新たにiPhoneの取り扱いを始めたことで、一時はKDDIへの悪影響も危惧されたが、「幸いにも足元の販売動向に大きな変化はない。予想以上に好調に推移している」と、田中社長は笑顔を見せた。 MNP(番号ポータビリティ)によるユーザー獲得も順調に推移している。9月はキャッシュバック付きで旧機種のiPhone 5を売りさばいたこともあり、今年度最多の11万件超の純増を記録した。

 田中社長は「9月はできすぎだった」と認める一方、10月以降もドコモからのユーザー流入が続いていることも明らかにした。

 iPhoneに関しては、人気の「5s」は世界的にも在庫が品薄状態で、KDDIもまだ十分に供給できていない状況だという。また、「5」の在庫が底をついてきたこともあり、十分な在庫がある「5c」が売れ始めているようだ。田中社長も「最初は廉価版と伝わってしまったが、カラーバリエーションがいい、と思われてきたのではないか」と分析した。

■ 年末商戦はiPadを売り込む

 好決算に気をよくしたのか、会見後にはサプライズ発言まで飛び出した。11月1日に発売される新型iPadの感想を聞かれた田中社長が、旧機種のWi-Fiモデルで下取りキャンペーンを始めることを思わず漏らしてしまったのだ。

 KDDIは9月のiPhone5s、5c発売を前に、タブレット端末とスマホで月間のデータ通信量を分け合えるデータシェアキャンペーンを競合他社に先駆けて発表していた。これに旧機種の下取りを組み合わせることで、今年の年末商戦はiPadも強力に売り込んでいくようだ。

 マスコミ対応では「勝って兜の緒を締めよ」とはいかなかったが、事業面では打てる策を着実に打ってきたKDDI。好調だった上半期の余勢を駆って、通期業績の上方修正も十分視野に入ってきた。