ヒグマ、冬眠前に街へ…ドングリ凶作で出没か

20131028-00000227-yom-000-1-view北海道内で9月以降、ヒグマの出没が相次いでいる。

 函館市や福島町では男性がヒグマに襲われ負傷、札幌市内では目撃情報が後を絶たない。今秋は餌となるドングリが全道的に2年ぶりに凶作となっているために、冬眠前のヒグマが餌を求めて市街地や農地まで活動範囲を広げている可能性が高く、道や道警は警戒を呼び掛けている。

 道警地域企画課によると、今年、道内でヒグマを見たり、足跡やフンなどの痕跡を見たりした認知件数(速報値)は22日現在で743件。総件数は必ずしも多くないが、9月以降に157件が集中している点が特筆される。9月24日には函館市女那川町の山林でヤマブドウ採りの男性が襲われて負傷、今月14日には福島町の山中でエゾシカ猟をしていた男性が両腕や背中をかまれるなど、昨年は年間を通じて1件もなかった人身事故が、今年は9月以降に限っても2件起きている。道の集計で今年度の捕獲頭数(同)は24日現在で444頭だが、こちらも9月以降に3割近い123頭が捕獲されている。

 札幌市南区の市街地では今月20日に2件の目撃情報が寄せられ、近くの市立石山小学校が集団下校などの対応に追われた。園内にヒグマが侵入した国営滝野すずらん丘陵公園(札幌市南区)では9月23日から今月19日まで臨時休園を余儀なくされた。

 ヒグマは冬眠に備えて秋にドングリを好んで食べる。道立総合研究機構環境・地質研究本部などによると、ドングリが凶作だと人里にヒグマが出没する件数が増える傾向にある。道は今年8月上旬〜9月上旬、NPO(非営利組織)などの協力を得て調査を行い、全道的にドングリ(ミズナラ)の凶作を確認した。

 ヒグマは例年だと12月頃までに冬眠に入る。道は31日までを「秋のヒグマ注意特別期間」に位置づけ、〈1〉1人で野山に入らない〈2〉鈴などで音を出しながら行動する〈3〉食べ物やゴミは必ず持ち帰る――などの注意を呼び掛けている。

 ヒグマの生態に詳しい道立総合研究機構の間野勉企画課長によると、札幌市近郊では近年、雌グマの個体数が増えている。札幌近郊では1960年代から90年にかけて冬眠明けのヒグマが大規模に駆除されて個体数が激減、駆除は91年から大々的に行われていない。間野課長は「クマがいない前提で市街地が郊外に広がっていった。前提が変わった以上、保護と駆除のバランスを検証する時期にきている」と語る。

 道総研と札幌市は2003年から同市中央区、南区、手稲区の山間部で有刺鉄線を設置し、付着したクマの体毛をDNA分析した。この結果、12年までに雄18頭、雌11頭が確認され、雌は06年以降に集中している。