楽天・星野監督に聞く なぜ日本一に縁がないのか

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過去3度、日本シリーズで敗退

星野監督は日本一に縁がない。
 中日監督時代には、2度リーグ優勝の経験があるが、1988年には西武に、1999年には福岡ダイエーに敗れた。阪神監督時代の2003年にもリーグ制覇を果たし、福岡ダイエーと日本シリーズを戦ったが、ここでも3勝4敗で敗れてシリーズのチャンピオンフラッグには手が届かなかった。短期決戦の采配は苦手なのか? 星野監督には聞かれたくない話題かもしれないが、あえて質問してみた。
 「なぜ、日本シリーズで勝てなかったと分析していますか?」と。

「これまではペナントレースを勝つことだけに必死で、そこがゴールだと考えていた。その先の日本シリーズへの意識は正直言ってなかったんだ。指揮官が、そういう気持ちでは、チームに伝染するよな」

 では、今回は?
 「でも、今回は違う。相手は巨人、日本一というものを強く意識している」

打倒巨人こそ星野監督のライフワーク

星野監督は“日本一”というビジョンをハッキリと掲げた。
 打倒巨人は星野仙一のライフワークを言っていい。ドラフト時の因縁から現役時代も打倒巨人に闘志を燃やした。40代の若さで中日の監督になってからも対巨人を強烈に意識していて、ロッテの落合博満に巨人が興味を示しているという情報をつかむと、大量出血を承知で、トレードを仕掛けて掻っ攫った。試合前に選手やスタッフが巨人の選手やコーチと私語をしているのを見かけるとこっぴどく叱った。常に対巨人への牙を磨いていた。

巨人と初めて日本シリーズで対決

「こんな大きな舞台で巨人と戦えるのはある意味幸せだな。うちの若い選手が、球界のチャンピオンを相手にしてどれだけ力を発揮できるか」
 永遠のライバルである巨人と、日本シリーズという大舞台で雌雄を決するのだ。星野監督にとって、これ以上の舞台設定はない。
 巨人という存在が星野監督の日本シリーズコンプレックスを払拭させているのである。 

 その巨人の原監督の野球について聞くと「シーズン中は、そこまで意識して見てはいなかったが、クライマックスシリーズを見る限り、ソツのない野球をしている。采配についてもバラエティに富んでいる」と警戒心を強めた。

巨人に対し宣戦布告

「原監督は弟のような人物。彼がルーキーのときから知っている。だが、今や立派な大監督になった。決して社交辞令でなく胸を借りるつもりでいる」
 公私を含めて原監督との親交は厚い。本来ならば、監督として飲んでかかる部分もあるのだろうが、星野監督はリスペクトの精神を忘れない。それが永遠のライバル・巨人に対する星野監督の礼儀であり、宣戦布告なのである。

 マー君の希望を聞く形となったが、シリーズ開幕を則本にしたのも、星野流といえば、星野流。「ピッチャーの使い方については、ヨシ(佐藤義ピッチングコーチ)に任せているからな。戦うのは選手とコーチ。わしはベンチで腕組みをしているだけ」。
 そう笑い飛ばしたが、星野監督の背中には、メラメラと燃える炎が見えてくる。