輸入冷凍エビ高騰…食卓に波紋 外食各社、メニュー変更余儀なく

20131020-00000010-fsi-000-1-view輸入冷凍エビの価格が高騰している。病害の拡大で東南アジアなどの養殖場の生産量が激減し、供給不足に陥っているためだ。足元の取引価格は前年の2倍以上に跳ね上がり、輸入エビを使う外食各社はメニュー変更を余儀なくされ、大手商社も調達先の多様化を迫られている。病害の状況が改善しなければ、正月のおせち料理用などの需要が高まる年末から年始に向け、影響が深刻化する懸念もある。

 輸入業者によると、輸入元から卸業者などへの出荷価格(無頭カラ付き、1.8キロ当たり)は、すしネタやフライ向けに東南アジアで養殖されている「バナメイ」が2400〜2500円と、前年(1100〜1200円)の2倍以上に高騰。ブラックタイガーも値上がりし、インド産が前年の約2倍、インドネシア産も約1.8倍となっている。

 高騰の要因は「早期死亡症候群」(EMS)と呼ばれる病害。バナメイの主産地の東南アジアで急速に広がり、バナメイが品薄状態に陥っている。年間50万トンで世界最大の輸出国とされるタイでは「今年の生産量が20万〜25万トンにまで激減する見通し」(大手水産会社)で、天候不順などに見舞われた中国でも例年の3割減となっている。

 さらに今夏以降、米国や中国がクリスマスや春節(旧正月)需要向けのエビを確保するため各地で買い付けを活発化させたことで、世界的な需給の逼迫(ひっぱく)を招いたことも影響している。エビを食材の中心に据える国内の外食各社は、円安のあおりも加わった輸入価格の高騰を受け、対応に追われている。

 アークランドサービスは9月下旬、傘下のとんかつチェーン「かつや」でエビフライ丼に代わる「海老(えび)・ヒレ・メンチカツ丼」を売り出し、メニュー変更で急場をしのいでいる。一方、ロイヤルホールディングスは天丼チェーン「天丼てんや」でエビ天2本が入った「上天丼」や「海老天そば(うどん)」の2商品の販売を今月20日で原則終える。

 大手商社はこの10年間で2.2倍に膨れ上がった中国の需要増を見据え、今年に入って三菱商事がタイの食品大手と養殖の合弁会社を立ち上げ、さらに双日もインドネシアの企業と組んで養殖に乗り出した。各商社は、インドやベトナムなど新たな調達ルートの確保も視野に入れ、対応を模索している。

 百貨店で販売されるおせち料理のエビは「ほとんどが今秋までに調達済み」(大手百貨店)というものの、価格高騰の波紋は広がりそうだ。スーパーではパック入り冷凍エビの価格が既に「昨年の1.5倍」(都内の大手スーパー)となっているほか、回転ずし店では「高騰前に調達した在庫が年末年始には底をつく」(大手チェーン)。価格は「しばらく高止まりが続く」(商社)とみられ、このままでは消費者への影響の拡大が避けられそうにない。