中国政府、経済成長率の目標修正へ

中国の習近平国家主席が経済成長を最優先する戦略を見直すと発表した。向こう1年間の中国の国内総生産(GDP)成長率は、国内外の経済情勢のみならず国内の政治判断にも左右されることになる。

 中国は18日、7-9月期(第3四半期)のGDP成長率が前年同期比7.8%、前期比7.5%だったと発表した上で、これ以上速いペースでの成長を維持するのは難しいとの見解を示した。

 習主席は今月に入り、2014年の成長率目標を7%(今年は7.5%)に下げると示唆していた。地方指導者との会議で、目標成長率をもっと低くしても10〜20年の間に国民1人当たりの所得を2倍にするという長期目標は達成可能、と発言した。成長目標を下げれば経済を改革する余裕が生まれる。ただし経済を改革すれば短期的な成長率は圧迫される。

 他の経済大国に比べればGDP成長率7%という数字は高水準ながら、07年以降の中国はこの2倍のペースで成長を遂げてきた。中国は今後もずっと事業機会を提供し続けると期待していた企業にとっては頭の痛い問題だ。米ウォルマートは数週間前に中国国内の複数店舗を閉鎖すると発表、米メーシーズは事業拡大計画を延期した。コンサルティング会社ベインのコンサルタント、レイモンド・ツァン氏によると、ここ数年間に中国南部では数千社の小企業が閉鎖した。

 習主席は経済政策を転換してGDP成長率だけが成功の指標ではない、ということを示そうとしているようだ。共産党の目標を実行する手段として、毛沢東時代の慣行であった、政府高官に自己批判の会議を開催するよう強く勧めている。また、成長を過度に重視する戦略が今や批判の的となっている。共産党の旗艦紙、人民日報によると、9月に東北部の河北省で開かれた自己批判会議では、ある地方官僚が「経済成長に重きを置きすぎた」「一般国民の不安には注意を払ってこなかった」と認めた。この会議は国内のテレビや新聞で幅広く報じられた。

 政府系シンクタンク、中国社会科学院(CASS)の上級エコノミスト、He Fan氏は、河北での会議が「基準を設定した」ほか、「もはやGDP成長率を自慢しても仕方ない。古くさい成長モデルに固執して上昇を志向している、とけなされるのがおちだ」と述べる。国内の研究者たちは何年も前から、地方官僚は自身の昇格のために中央政府のGDP目標を常に超えようとしている、と指摘していた。

 より持続可能な成長軌道を探る自己分析、取組みは微調整を伴うものでもある。7月には、低成長が経済の硬着陸を招く恐れがあったため、中国政府はインフラ投資を増やすという従来の景気回復手段を用いた。

 しかし、より持続可能な成長を実現するために、政府はエネルギー価格を世界の市場の変動により速く連動させることで需要管理の向上、環境汚染の緩和、産業の効率化をはかろうとしている。

 エコノミストによると、7-9月期の成長はインフラ投資や輸出の伸びに加えて今年に入っての融資額の大幅な増加をも反映した。国家統計局の盛来運・広報官によると、9月には成長ペースが鈍化した。「今後は7-9月期と同水準の成長ペースを維持するのは難しい」。

 中国の指導部は企業の競争力を引き上げる政策を模索しているが、明確な成果はまだ現れていない。党指導部は来月、北京で会合を開いて改革案を発表することになっている。この改革によって賃金や社会福祉税、環境汚染防止対策コストなど、企業側のコストは増加するもようだ。そのため政府が国営大手による独占市場を民間に開放するなど、何らかの生産性向上策を採らない限り、成長率は下がってしまうおそれがある。