PL学園“監督不在”でも近畿大会出場 名門の慣習改善、高まる結束力

20131016-00000131-san-000-5-view高校野球の秋季大阪大会で、名門PL学園が「監督不在」ながら準優勝し、5年ぶりとなる来春の選抜出場を目指して19日から始まる近畿大会に出場する。2月に上級生から下級生への部内暴力が発覚し、6カ月間の対外試合禁止処分を受けて4月に前監督が辞任、現在も次期監督が決まっていない。このため、部内の上下関係の風通しを改善し、野球経験のない正井一真校長(66)が責任教諭と監督を兼ねてベンチ入りするなど、部内改革が進んでいる。

 監督不在の練習は、同校で立浪和義氏(元中日)らと同期だった深瀬猛コーチ(44)を中心に行っている。試合中の投手交代や攻撃時のサインは、ベンチキャプテンの田中俊選手(2年)を中心に選手が話し合って決める。「野球の考え方が統一できているので、サインも出しやすい」と田中選手。

 大阪大会ではランナーをバントで送るケースが多かったが、決勝の履正社戦では3点差を追う九回に先頭打者が出塁すると、バスターで左前安打。「選手たちだけでバスターを決めたのは成長です」と深瀬コーチは話した。

 これまで、甲子園で春夏計7度優勝を果たした名門では、下級生が上級生の「付き人」的な役目をすることが慣習だった。だが、2月下旬に発覚した部内暴力は、寮内で複数の上級生が横たわった下級生1人の腹部に膝から落ち、下級生はけいれんを起こして救急車で搬送された。このため、上下関係の改善を急いだ。

 6月から下級生が上級生の練習着を洗濯することを禁止し、寮関係者とPL教団のボランティアが洗濯する。「1年生の洗濯終了が午前1時になるときもあると聞いたので」と正井校長。中川圭太主将(2年)も「そういうこと(付き人制度)はもうやめます」と力を込めた。

 また、野球経験はないものの、正井校長はベンチで精神的な支えとなっている。「試合中はけなさない。ミスもほめよう」と勇気づける。一体となった選手たちを「全員が必死になっている」と正井校長。映画「サウンドオブミュージック」の劇中歌を紹介しながら「無からは何も生まれない。いまある幸福は過去に善いことをしていたから。善いことを積み重ねていこう」と話しているという。