消費増税 市場は先行き楽観…「腰折れ」回避が課題

20131002-00000014-mai-000-1-view安倍晋三首相が1日に表明した来春の消費増税の影響について、市場関係者の間では一時的に消費が低迷するものの、景気の回復基調は継続するとの観測が広がっている。昨年秋以降の円安・ドル高などを背景に輸出企業などが収益力を改善させ、内需も堅調なためだ。ただ、日本経済が賃金水準の上昇も伴いながら本格的な景気回復を実現するうえでは課題も多く、市場では増税とともに成長戦略の着実な実行を求める声が根強い。

1日の日経平均株価の終値は前日比28円92銭高の1万4484円72銭。米国の一部政府機関が閉鎖されるとの報道を嫌気して伸び悩んだが、午後1時過ぎに「首相が増税を表明」と伝わると、市場は「実行力を示した」と評価。一時は1万4600円程度まで値を戻す場面があった。

 SMBC日興証券の牧野潤一氏は増税前の駆け込み需要が見込まれる2014年1〜3月期には実質GDP(国内総生産)成長率が前期比1.7%増になる一方、4〜6月期は反動減でマイナス1.1%に落ち込むと試算。野村証券の尾畑秀一氏は「増税は個人消費に対し、14年度で1%、15年度で0.8%程度の下押し圧力になる」と予想する。

 それでも市場で「景気の腰折れリスクは少ない」(尾畑氏)との見方が多いのは、円安や米国経済の回復が追い風となり、製造業だけでなく非製造業の景況感も足元で改善しているためだ。バークレイズ証券の森田京平氏は「過剰在庫、過剰設備、過剰雇用という三つの『過剰』が抑制されている。景気後退を引き起こす『負のエネルギー』はないのが現状」と指摘する。

 来春に消費税率が8%に引き上げられても、15年10月には10%への税率アップが控えている。政府は5兆円規模の経済対策をまとめたが、日本経済が回復基調を続けるには短期的な対策だけでなく、企業の国際競争力を抜本的に向上させ、賃金水準を引き上げていくことが不可欠との見方も多い。

 安倍首相が法人実効税率の引き下げ検討を表明したことについて、ニッセイ基礎研究所の矢嶋康次氏は「法人減税は今後、『代替財源が見つからない』との論理でトーンダウンする可能性がある」と指摘。景気が腰折れすれば、消費増税法の景気条項で10%への引き上げが先送りされる可能性もあり、「法人減税や規制緩和などの改革を相当なスピード感を持って実現できるかが今後の焦点になる」と強調した。