降圧剤「誇大広告」 ノ社の刑事告発検討 厚労省、立ち入り検査へ

製薬会社「ノバルティスファーマ」が販売する高血圧治療薬「ディオバン」(一般名・バルサルタン)の臨床研究データ操作問題で、研究論文を活用した同社の広告が薬事法違反(誇大広告)の疑いがあるとして、厚生労働省が刑事告発を検討していることが27日、分かった。

 厚労省の有識者委員会は「誇大広告に当たる疑いがある」として、30日に行われる会合で、国に厳しい対応を求める中間報告をまとめる予定。これを受け、厚労省はノ社に立ち入り検査などを行う方針だ。

 委員会のこれまでの調査では、ノ社は「ディオバンは日本人の脳卒中を防ぐ効果が高い」とする東京慈恵医大の論文を引用し、419種の宣伝資料などを作成。同様の効果があるとした京都府立医大の論文も、285種の宣伝資料に使われた。

 委員会は、臨床研究に同社の社員=退職=が関わっていたことや、同社の奨学寄付金が大学に支払われた時期が研究期間と重なっていることなどから、「実態としては社として(臨床研究に)関与していたと判断すべきだ」と結論づけた。

 厚労省は、不正なデータを使ってディオバンの宣伝を行ったことは、医薬品の効能や効果について虚偽や誇大な記事を広告してはならないとする薬事法に違反する可能性があると判断。広告は一般の患者ではなく医師に対して行われていたが、同法は誇大な広告自体を禁じており、同法違反での立ち入り検査は可能とした。

 ただ、委員会が大学関係者やノ社元社員らに行った聞き取り調査では証言内容に食い違いが多く、データ操作を行った人物や、ノ社の関与については特定できなかった。ノ社はデータ操作への関与を否定しており、厚労省は刑事告発も視野に、調査を進める方針。