バルサルタン 慈恵医大の論文撤回 販売促進の根拠消滅

降圧剤バルサルタン(商品名ディオバン)の臨床試験疑惑で、英医学誌ランセットは6日、データ操作が判明した東京慈恵会医大の2007年の論文を撤回(取り消し)したことを明らかにした。販売元のノバルティスファーマはこの論文を販売促進に利用してきたが、根拠が失われた。

 論文は望月正武元教授(同年退職)が責任者を務め、「バルサルタンには他の降圧剤と比べ、脳卒中を40%、狭心症を65%減らす効果があった」などと結論付けていた。

 今年4月、ノ社の社員(5月に退職)が統計解析を担ったにもかかわらず、論文では会社の肩書を伏せていたことが判明。大学が調査した結果、論文に使われた血圧データとカルテの記載が異なるケースが多数見つかり、「データが人為的に操作されていた」と7月に発表していた。

 同誌編集部は大学の報告を受け、「論文の信頼性に重大な疑念がある。統計担当者の関与も不透明」と判断した。一連の臨床試験を巡っては、京都府立医大チームの6論文が別の学術誌から撤回されている。