三重・中3殺害 絞れぬ犯人像 突発的犯行、慌てて逃走か
三重県四日市市立中学3年の寺輪(てらわ)博美さん(15)が殺された強盗殺人事件は、遺体が発見されてから5日で1週間を迎えた。県警特別捜査本部は93人態勢で捜査を進めるが、今のところ犯人に結びつく有力な情報はないという。特捜本部は今後、専従捜査員を約20人増やして聞き込みの範囲を拡大、目撃者がいないかどうかを調べる。■足取り
8月25日午後11時ごろ、複数のドライバーが県道を歩く寺輪さんとみられる女性の姿を目撃している。最後の目撃証言から遺棄現場の空き地まで約400メートル。現場までの数分間の寺輪さんの状況が分かっていない。
午後11時前に空き地前の小道に入っていく白い軽乗用車が目撃されているが、犯人につながるかどうかは不明だ。
この日、花火見物をした寺輪さんは午後10時34分にJR朝日駅で下車。駅の防犯カメラの解析では、寺輪さんと友人のほかに女性3人が列車から降りた。友人と別れた駅近くのスーパーの防犯カメラには、友人の姿だけが映っていた。
現場の空き地付近を夜間に歩く人は皆無に近い。捜査関係者は、犯人がスーパー付近で1人で歩く寺輪さんを見つけ、後を追った可能性を指摘している。
■遺留品
「不可解な点が少なくない」。犯人が自分に結びつく物証を隠そうとした形跡がないことから、捜査関係者の一人はそう話す。
遺体周辺からは、寺輪さんの衣服や手提げかばんなどが見つかった。犯人が触った可能性がある財布やスマートフォンには複数の指紋があったものの、拭き取った跡がないことが分かっている。財布の現金が全て抜き取られていたが、レシートやポイントカードは残っていた。
ある捜査員は「素人の突発的な犯行ではないか。被害者が死亡して驚き慌てて逃げた可能性がある」と指摘する。
■犯人像
あるベテラン捜査員は「複数犯なら、より人目に付かない場所に遺体を捨てることもできたはずだ」として単独犯説を唱える。別の県警関係者は、犯行に車が使われた可能性を指摘し「運転役や実行役がいる」との見方を示した。
しかし、特捜本部は「犯人像を絞る段階ではない」として、遺留品の鑑定や周辺の聞き込みを進めている。
特捜本部は県警のホームページや四日市北署(059・366・0110)で情報提供を呼びかけている。
◇女子中学生強盗殺人事件の経過
8月25日
8時ごろ 寺輪博美さんが自転車で四日市市の同級生宅へ
13時ごろ 別の友人と市内の大型商業施設で落ち合い買い物や食事
20時半 大型商業施設屋上で見物した花火大会が終了
22時半 JR富田駅から乗車。姉に「帰る」とLINEで連絡
22時34分 JR朝日駅に到着。駅構内の防犯カメラに寺輪さんと友人の姿
22時45分 駅近くのスーパーで友人と別れる
同時刻ごろ 遺体発見現場前の小道に入っていく白い軽乗用車が目撃される
22時55分 友人にLINEで連絡
同時刻ごろ 現場近くを歩く寺輪さんとみられる髪の長い若い女性が目撃される
23時17分 姉からの電話に出ず
27日19時 家族が捜索願
29日14時半 朝日町の空き地で遺体発見
30日午後 三重県警が遺体を寺輪さんと断定