ネット口座が確実に拡大中、主役はなんと大学生

インターネットによる株取引が着実に増加しているという。ある大手証券会社の営業担当役員によると、「ネット取引口座数は、リーマンショック後も今日に至るまで年率で2%前後の伸びを続けている」そうだ。伸び率としては小さいかもしれないが、件数では毎年20万件程度増加している計算になる。

 ネット取引の約95%が個人投資家。団塊の世代が退職後に本格的に株取引を始めていると考えるのが普通だが、この証券会社の役員は「若い世代、特に大学生の取引が口座拡大をけん引している」と語る。

 大学生が株式投資を始めるきっかけは、長年、証券会社が行ってきた寄付講座の影響が大きいようだ。たとえば、最大手の野村証券が90年代から取り組んでいる寄付講座数は、現在、約120校にも及んでいる。

 寄付講座は立ち見もいるほどの盛況。証券会社の宣伝をするつもりはまったくないが、「生きた経済を学べる」(参加した学生)ところが面白いのだとか。アナリストなど経済の現場で働く専門家が講師を勤め、実際の経済の動きを具体的に解説していく。「教科書がいかに現実とかけ離れているかが良く分かる」(同)そうで、話を聞いて行くうちに「自分たちも日本経済の最前線で何かしてみようか」という気持ちになるようだ。

 若い投資家の投資額は総額で20万円程度。5万円ずつ4銘柄を2週間から1か月程度の期間で売買する。「うまくいけば、飲み代くらいになるし、失敗してもバイトでなんとか取り戻せる金額」(前出の証券会社役員)。

 ゲーム感覚と言われればそれまでだが、彼らの動向はバカにならない。あくまで概算ではあるが、投資金額を単純に合計すると、年間で数百億円規模の金額になるという。これだけのおカネが短期間で売買を繰り返すのだから、実際に動く金額はもっと大きくなる。

 また、大学生投資家は、関係者にとってもたいへん、ありがたい存在でもある。投資先となる企業にとっては何も文句を言わない株主であるうえに、株式の流動性向上にも貢献してくれる。また、証券会社にとっては将来の大口投資家の“卵”といえる。

 一部の証券関係者は「近い将来、『大学生向け株式投資ファンド』ができるだろう」と期待しているという。