噂の「新iPhone」とドコモの戦略を軸に展開、冬商戦は各メーカーの正念場に

NTTドコモのツートップ戦略や2.5GHz帯の追加割り当て、ソフトバンクの米スプリント買収、NECカシオの撤退など、携帯電話業界では今年も多くの変化が起きている。冬商戦に向けた動きが本格化する9月以降も、発売が予想されているiPhoneの新機種を軸に、市場にさまざまな変化が起きる可能性が高い。

噂の「新iPhone」はいつ登場する?

 今年もインフラ、端末、サービスと、激しい競争と劇的な変化が起きている携帯電話業界。その変化は、今年後半の動向を占う冬商戦に大きな影響を及ぼすと予測される。

 軸となるのは、やはりアップルのiPhoneということになるだろう。昨年は9月に新機種「iPhone 5」が登場していること、そしてiPhoneは1年に1度、何らかの形で新機種が投入されていることから、今年も昨年と同じ時期にiPhoneの新機種が登場するのではないかと予測する人が多い。

 また、アップルは新機種発売に先駆けて、iOSの新バージョンを公開することが多いが、今年も6月に開催された「WWDC 2013」で「iOS 7」を発表しており、秋頃の提供が予定されている。iOS 7は、デザインが一新されるなど大幅なバージョンアップが行われることもあり高い注目を集めている。そのため、新OSの機能をフルに生かす上でも、新しいハードが投入されることを期待する向きがある。

 特に日本ではiPhoneの人気が高いだけに、新機種に関しても多くの噂が出回っている。無論、必ずしも新機種が登場するとは限らないのだが、仮に新しいiPhoneが発売されるとなれば、例年の動向から見ても日本市場に与える影響は非常に大きなものになると予測される。

仮にiPhoneの新機種が登場した場合、真っ先に注目されるのが、iPhoneを販売するキャリアの動向だ。特に、iPhoneを主力機種に位置付けているauとソフトバンクモバイルにとっては、新機種がもたらす影響は非常に大きい。それだけに新iPhoneの投入に合わせ、さまざまな新戦略が打ち出されることになるだろう。

 最近は、携帯電話キャリア同士の「つながりやすさ」に関する競争が過熱していることから、iPhoneの電波や通信方式に関する動向にも注目が集まると予想される。現在のiPhone 5は、日本のLTEで対応している周波数帯のうち、2.1GHz帯と1.7GHz帯をサポートしており、あくまで帯域的に見るならば、双方の周波数帯を持つソフトバンクグループが現在のところ有利だ。

 だがもし、auが力を入れてLTEを整備している800MHz帯に、新しいiPhoneが対応した場合、そうした状況にも大きな変化が出てくる。またさらに、TD-LTEに対応したiPhoneが登場したら、両者の競争やインフラ整備のあり方も大きく変化してくる可能性がある。無論、インフラの競争は、周波数帯や通信方式だけで量ることができるものではない。しかし、iPhoneが対応する機能の1つひとつで、auとソフトバンクモバイル、双方の施策が大きく変化する可能性が高いだけに、見逃せないポイントだ。

 そしてもう1つ、新しいiPhoneの登場で大きな注目を集めるのが、現在iPhoneを投入していないNTTドコモの動向だ。最近は「ツートップ戦略」など思い切った施策を打ち出しているNTTドコモだが、MNPによる他社への流出という点では、iPhoneに対抗する施策が万全というわけではない。それだけに新機種が登場した場合、iPhoneを投入するのか、しないのであればどのような施策で対抗するのかが、やはり注目されることになるだろう。

国内・海外メーカーの正念場となる冬商戦

 iPhoneの新機種が発売された場合、その影響はキャリアだけでなく端末メーカーにも大きな影響を及ぼす。昨年は、iPhone 5発売の直前にNTTドコモが「秋モデル」を発表したほか、海外でも多くのメーカーがiPhone 5の発売前に新機種を発表するなど、iPhone 5に対抗する多くの動きが見られた。

 今年は、キャリア各社がiPhone重視、もしくは端末数を絞る方針を見せていることから、日本では新しいiPhoneが登場しても、それに直接対抗して新機種をぶつける動きは少ないと見られる。だが新しいiPhoneの影響は冬商戦にも影響してくるだけに、他のメーカーが冬商戦でどのような端末を提供し、対抗軸を作るかは注目されるところだ。

 特に国内メーカーにとっては、この冬商戦が1つの正念場といえる。国内メーカーの端末を多く販売していたNTTドコモがツートップ戦略で端末を絞る方針を示したことから、スマートフォンからの撤退を表明したNECカシオをはじめとして、多くの国内メーカーが販売戦略の見直しを迫られており、今冬も厳しい戦いを強いられる可能性が高いからだ。とはいえ国内メーカーのスマートフォン開発能力は確実に高まっているだけに、いかに逆風に耐えてユーザーからの支持を回復するかが勝負だろう。

 もっとも冬商戦に関して言うならば、アップル、そして夏商戦でNTTドコモの「ツートップ」に選ばれてブランド力を高めた、ソニーモバイルコミュニケーションズとサムスン電子以外のメーカーは安泰とは言えない状況にある。特定メーカーの端末にキャリアの販売施策が集中している現状、それ以外のメーカーが存在感を大きく失っているからだ。採算が合わず体力が続かなければ、海外メーカーとて撤退の可能性もあるだけに、今冬の各社の端末、及び販売戦略は、今後を見据える上でも大きなポイントとなる。

 日本ではiPhoneが今なお強力なブランド力を持つだけに、新しいiPhoneが登場すれば、市場全体がその影響を大きく受けることは間違いない。新iPhoheがいつ、どのような形で登場するかにはすでに大きな注目が集まっているが、登場によって市場がどのように変化するかという点にも目を配っておくべきだろう。
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