中古車ガリバー、アジア800店計画の勝算

中古車買い取り大手、ガリバーインターナショナル。店舗ネットワークや買い取り台数など、日本国内でトップ同社が本格的な海外進出に打って出る。

ガリバーは2014年2月からタイで30店を新設するのをきっかけに、周辺国地域へ一気に出店し、17年度末までにASEANで800店のネットワークを構築する。現在の国内店舗数は420(フランチャイズチェーン含む、2013年3月末)。たった5年で現状の国内の約2倍となる店舗ネットワークを東南アジアに作り上げるという計画だ。

■ かつての中国、インド進出計画はとん挫

 ガリバーにとって、海外展開は今回が初めてではなく、かつて2007年から08年にかけて中国やインドで出店準備を進めていたことがあった。ところが、リーマン・ショックにより、計画は白紙に。現在は米国で4カ所の直営店を展開するにとどまる。

 ASEANへの出店攻勢に当たり、ガリバーはまずタイに照準を定めた。ガリバーの試算によると、タイ国内ではすでに210万台規模の中古車マーケットがあるという。タイは日系車の存在感が強く、新車販売の約9割を日系車が占める。直近2012年は、初めて自動車を買う消費者向けに物品税の還付措置を行うなど、政府主導の積極的な需要喚起が行われ、新車販売台数は144万台と前年から8割伸びた。

 「一定数の新車販売規模が、中古車事業を展開する条件となる。インドネシアやマレーシアも選択肢としてあるが、100万台以上の安定的な市場としてタイは魅力的。国民の所得や購買力からみても最初の進出先はタイと決めていた」。ガリバー経営戦略室の許哲・執行役員は話す。

ASEAN全体における関税撤廃の動きも後押しになった。ASEAN加盟10カ国のうちタイやインドネシアなど6カ国では、すでに関税が撤廃されており、2015年までには残り4カ国でも関税が撤廃される予定だ。加盟国内での物品やサービスなどの流動性が高まることで、多国間での自動車売買が活発化する。

 もちろん課題はある。「人によって買い取り価格の査定にバラツキが生じないか。あるいは在庫管理を適正にできるのか。タイでは個人経営の中古車店は多いものの、ナショナルチェーンとしての中古車買い取り店はない。人材育成が大きな課題といえる」(許哲・執行役員)。

■ タイ損保大手との合弁関係に勝算

 この点を含めても、ガリバーには勝算があるようだ。先行した米国事業が直営店展開だったのに対し、タイでは現地の有力企業である、損害保険最大手のビリヤ・グループと合弁事業という形態をとりフランチャイズチェーン方式でビジネスを展開していく。

 「昨年の7〜8月ごろに合弁相手のリサーチを始めた。そのなかで、日本の金融機関に紹介していただいたのがビリヤ。ビリヤは損保大手だが、三菱自動車やマツダなどの自動車ディーラーも展開するほか、板金などサービス事業のノウハウもあり自動車事業への取り組みも積極的です。単独でやれば参入障壁などもあるが、現地企業と組むことでそういうリスクを減らすこともできる」。許・執行役員はこう語る。

 現地でネットワークを有する企業とタッグを組むことの意義は大きい。たとえば、国内トラック大手のいすゞ自動車は、タイで1トンピックアップトラックの販売が好調だ。2012年のタイでのピックアップシェアは1位であるトヨタ自動車の約40%に続いて、同30%と2位につける。それを支えるのがタイでの販売を担う三菱商事の存在だ。三菱商事のタイにおける強力な販売網をいかし、いすゞの販売は競争力を維持・向上してきた。

ガリバーにとってもビリヤと手を組むのは単に参入障壁の問題だけではなく、いすゞのように現地販売網を掌握する企業と手を組むことで、中古車販売の拡大につなげていく狙いが存在する。ビリヤ側からすれば中古車事業の全国展開によって、損保事業とのシナジーが期待できるほか、ガリバーが日本で培ってきた中古車査定の手法や在庫管理システムを手中にできる。お互いの強みを最大限に生かすことで、タイでの事業基盤を盤石にしていく構えだ。

■ 進出業態は模索中

 国内では小売りを重視した店舗展開を推進するガリバーだが、買い取り店中心なのか、小売りも意識するのかについては、ビリヤと協議中とのことだ。いずれにせよ、一定の中古車を集める必要があり、「まずはしっかりとタマを確保することに全力をあげる」(許・執行役員)。日本で培った実力がどこまで発揮できるか。現地企業との合弁という強力なバックアップを得て、日本最強の中古車買い取り店は、東南アジアでかつてないチャレンジに臨む。