秘密保全法案 公務員漏えい懲役10年 一気に厳罰化

政府が秋の臨時国会に提出する秘密保全法案を巡り、特定の秘密を漏らした公務員や、不正な手段で公務員らから秘密を入手した人に対する罰則が、最高で懲役10年となることが分かった。現行の国家公務員法の守秘義務違反(最高で懲役1年)や自衛官らを対象にした自衛隊法の防衛秘密漏えい(最高で懲役5年)と比べ、一気に重罰化することになる。法案については国民の「知る権利」の侵害につながると懸念する声があり、国会審議で罰則の妥当性が議論になりそうだ。

法案では、政府は(1)防衛(2)外交(3)公共の安全と秩序の維持−−の3分野で「公になっていないもののうち特に秘匿を要するもの」を「特定秘密」に指定。この特定秘密を漏らした公務員や国と契約した業者の役職員は処罰される。公務員らをだましたりして特定秘密を入手した人についても、未遂や共謀、そそのかしも含めて処罰対象となる。

 2011年に民主党政権に提出された有識者会議の報告書は、自衛隊法の防衛秘密漏えいと同じく最高刑を「懲役5年とすることが考えられる」と記載。そのうえで、米国から供与された軍事情報の保護を定めたMDA秘密保護法の規定に合わせて「懲役10年とすることも考えられる」と両論を併記するにとどまった。

 このため、最高刑を懲役10年とする判断には、現行法の罰則とのバランスの観点からも慎重な検討を求める声が強い。中でも、特定秘密のうち警察・公安情報を指すとされる「公共の安全と秩序の維持」が、外交、防衛に関する秘密と同等に保護されるべき情報と言えるのか、専門家からも疑問視する声が出ている。

 園田寿・甲南大法科大学院教授(刑事法)は「そもそも、この法律により報道機関や取材を受ける公務員が萎縮し、表現の自由や国民の知る権利が後退しないか懸念される」と指摘。「懲役10年は現行のMDA秘密保護法に合わせて設定されたのだろうが、妥当性、正当性が十分検討されていない点も問題だ」と慎重な議論を求めた。

 諸外国では、米国が国防情報の漏えいに日本の懲役・禁錮にあたる最高10年の自由刑▽英国は防ちょう・防衛情報など5分野の機密を公務員が漏らした場合に最高で懲役2年▽フランスは公務員らによる国防上の秘密の漏えいに最高7年の自由刑を定めている。

【ことば】秘密保全法案

外交や公共の安全などに関する機密情報を漏えいした公務員らを処罰するために政府が成立を目指している法案。自民党の福田康夫政権時代の2008年から検討が始まり、民主党政権も有識者会議を設置して法案提出を検討した。安倍晋三政権は外交・安全保障の司令塔となる国家安全保障会議(日本版NSC)の設置法案と併せ、米国と情報共有を進めるうえで必要な法案と位置づけている。