芸能人装う「サクラ」サイト 焦りから深入り…資金援助型など多様化

20130821-00000517-san-000-6-view「サクラ」を利用して言葉巧みに出会い系サイトなどへ誘導し、高額な利用料金を請求するサクラサイト商法。芸能人などをかたる「なりすまし型」のほか、資産家を名乗って援助を申し出、「手続き」と称してメールでのやり取りを引き延ばす「資金援助型」など手法は多様化している。約2千万円をだまし取られた福岡県の男性(54)は「だまされるのがバカだと思うが、当時はそれだけ追い詰められていたのかもしれない」と振り返った。

 男性が出会い系サイトに登録したのは平成21年3月。当時の勤務先から関西への異動を命じられ、単身赴任生活を送っていた。長男が大学進学を控えて家計が苦しい中「資金援助させてほしい」というメールに目が留まった。仕事環境から精神的に余裕のない毎日を送っていたせいもあり、軽い気持ちで返信した。

 誘導されたサイトでやり取りをはじめ、手渡しで現金を受け取る約束を取り付けた。一往復600円のメールを何度も交換したが、「知的な相手ではなく、すんなりカネが手に入るのでは」と考えていたという。

 約束当日。集合場所に着いてメールを重ねたが、相手に会うことはできず、この日だけで利用料金1万円以上を費やしてしまった。「損失分だけでも取り返さなくては」。焦りから、サイトに深入りしていった。

 退勤後、明け方までパソコンに向き合う日々で判断能力も低下し、「銀行頭取夫人」や「年商100億の女」からの誘いにも飛びついた。「1件でも本物なら、損はすべてチャラになる」。約1年で、利用料金は1千万円に達していた。

 妻に打ち明け、義父の遺産で借金を返済したが、家族の冷ややかな視線を受け、損害回復への決意はいっそう固まった。一時は自殺も考えたが、冷静さを取り戻したのは、退職金を返済の一部に充てる目的もあり会社を辞職、業務上のストレスから解放された後のことだった。

 男性がサイト運営会社に約2200万円の損害賠償を求めた訴訟で、東京高裁は今年6月、全額の賠償を命じる逆転勝訴を言い渡した。しかし、運営会社側は上告し、派遣労働などで稼ぐ月10万円ほどの収入は、今も消費者金融への返済で消えていく。

 男性は「出会い系には心の隙を突き、抜け出せなくする仕組みがある。『自分は大丈夫』と過信しないでほしい」と訴える。