田中将大 今オフの「メジャー移籍」消滅危機

20130808-00000006-nkgendai-000-1-view<決裂したNPBとMLB>

 衝撃的な事実が判明した。これまでイチロー(ヤンキース)やダルビッシュ(レンジャーズ)らがメジャー挑戦の際に利用してきたポスティングシステム(入札制度)が事実上、消滅しているというのである。

 入札制度は1998年、日米コミッショナー間で締結された「日米間選手契約に関する協定」によって導入。以後、協定は約2年ごとに改定、更新されてきた。

「昨年12月が協定の更新時期だったのですが、大リーグ機構(MLB)と日本野球機構(NPB)との間で話がまとまらなかった。協定自体が白紙になっているため、入札制度も消滅状態になっているのです。昨年はたまたまポスティングを使う選手がいなかったため、公にならなかった」(事情通)

 ショックなのが楽天の田中将大(24)だ。田中は以前からメジャー挑戦の夢を抱き、早ければ今オフにも入札制度でのメジャー移籍を目指している。

 田中は昨オフ、3年総額12億円プラス出来高でサインしたものの、契約更改の席で球団に対してメジャー挑戦の意思を直訴。その後の記者会見では、「将来的に、メジャーでやろうという気持ちが芽生えた」と、メジャーへの強い思いを隠さなかった。今春のWBCでは日本代表メンバーとして、世界にその存在をアピール。今季は飛ぶボールが復活したにもかかわらず、開幕から破竹の15連勝をマーク。防御率1.26は12球団トップで、この日(6日)は、パ・リーグ史上初となる3カ月連続の月間MVP受賞を果たした
 「日本球界のエース」である。田中の獅子奮迅の活躍は、今オフのメジャー挑戦が大きなモチベーションになっているともっぱらだった。その夢の道がすでに閉ざされているとしたら、やりきれない。

<球団幹部がメジャーに売り込み>

「楽天も、田中の意思を尊重するつもりでしたが……」
 とは、某球団関係者。

「昨冬、楽天の立花陽三球団社長(42)が米国で行われたウインターミーティングに足を運んだ。その際、複数球団の幹部と接触し、田中を売り込んだといわれています。今季の田中の年俸は4億円ですが、出来高を含めれば5億円程度。楽天は今季、この田中の活躍もあって2位に7.5ゲーム差をつけて首位を快走しており、もし優勝を果たせば他の選手の年俸も上げる必要がある。田中に対してのこれ以上の昇給は、球団経営を圧迫しかねないのです」

 田中にはメジャー全球団が獲得に関心を持っているといわれている。某メジャー球団の関係者は、「田中が入札制度を使えば、ダルビッシュの落札額(5170万3411ドル=約51億円)に迫るだろう」と話す。しかし、入札制度がなくなったことは、メジャー行きが絶たれる田中にとっても、莫大な入札金が懐に入らない楽天にとっても、死活問題なのである。

「困るのは田中だけじゃない。メジャースカウトは田中と並んで前田健太(広島)の動向にも注視している。前田の今季の年俸は2億1000万円プラス出来高。現在9勝を挙げており、2ケタ勝利は確実。前田も強気に年俸アップを要求するでしょう。資金力が豊富ではない広島との交渉次第では、メジャー挑戦を直訴する可能性もある」(広島OB)

<「現時点ではお話しできません」>

 入札制度の改定を柱とした日米間の協議は、現在も継続して行われてはいる。某球界関係者が言う。

「11年オフにダルビッシュの落札額が高騰したこともあり、MLBが昨年6月、NPBに制度の見直しを求めた。NPBは“最高額落札球団だけでなく、複数球団に交渉権を与える”などという改定案を提示したが、いまだ合意には至っていない。11月1日が入札制度の解禁日となるため、NPBは9月中にも新しい入札制度を導入したい意向があるようですが、メジャーではA・ロッド(ヤンキース)らの薬物使用問題が勃発してそれどころではない。交渉がなかなか進まないのが現状のようです」

 MLBとの交渉役であるNPBの伊藤修久法規部長は、日米間の協約改定交渉について、「現在、大リーグ機構と協議中のため、現時点ではお話しできません」と回答した。

 新協定が合意に至れば田中も心置きなく海を渡れるわけだが、MLBの制度見直しの通告から1年以上という長い時間経過が、問題解決の難しさを意味している。

 このままなら、マー君はメジャー行きを断念せざるを得なくなる。