次期iPhoneやiPad miniでも採用?シャープを救った「IGZO」の凄さとは

シャープが2013年8月1日に同年度第1四半期(2013年4〜6月期)連結決算で液晶事業の改善などにより大幅な増収増益を発表しました。まだ厳しい状況には変わりはないですが、同社の代表取締役社長 高橋興三氏からも「回復基調に入った」という発言が出ています。

回復基調への要因となったのが液晶事業とのことで、新技術を搭載した「IGZO(イグゾー)」液晶も大きく貢献しているようです。

シャープの液晶といえば「AQUOS(アクオス)」ブランドで展開されていますが、最近では主にスマートフォンやタブレットに搭載されている「IGZO(イグゾー)」液晶が注目されています。一般の消費者もテレビCMなどでも目にする機会が増えたと思います。

この「IGZO」ですが、技術的に凄いと言われていますが、いったい何が凄いのでしょうか?
改めで聞かれると、「電池が持つ(らしい?)」くらいしか答えられないという人も多いでしょう。

そこで今回は、アップルの次期iPhoneやiPad miniにも採用の可能性がささやかれているシャープを救ったこの「IGZO」についてみていきたいと思います。

■そもそもIGZOの名前の由来は?
IGZOとは、酸化物半導体のことで「Indium(インジウム)」「Gallium(ガリウム)」「Zinic(亜鉛)」「Oxygen(酸素)」から構成されており、これらの頭文字を取って「IGZO」と名付けられています。

このIGZOを最初に搭載したガジェットがNTTドコモのスマートフォン「AQUOS PHONE ZETA SH-02E」と、KDDI(au)のタブレットの「AQUOS PAD SHT21」です。

■IGZOの特徴その1 「低消費電力」
IGZOの大きな特徴が、スマートフォンやタブレットにも採用された理由の「低消費電力」です。ディスプレイの消費電力を、最大10分の1程度まで減らすことができるというIGZOの「低消費電力」は、大きくわけて2つの機能で実現されています。

1.液晶アイドリングストップ
これまでの液晶は画面が表示されている間は動画でも静止画でも電流が流れますが、IGZOは静止画で更新されない状態であれば一時的に電流を止めることができます。これはIGZOが、“電源オフでも一定期間は画像を保持できる”からです。つまり、これまでの液晶だと静止画表示中でも1秒間に60回の画面更新をしていましたが、IGZOは1秒間に1回の更新に抑えることができるのです。

2.トランジスタの小型化
HDやフルHDなどのように高画素化するとトランジスタの1画素あたり明るさが落ちるため“バックライト明るくする必要”があり消費電力が上がってしまいます。それに引き替え、IGZOは、これまでの液晶より早く電流が流れる特徴を活かしてトランジスタの小型化ができるので、バックライトの透過量が増え、同じ電力でも画面を明るくできるのです。

このアイドリングストップとトランジスタの小型化により従来の液晶よりも消費電力を抑えつつ、同等かそれ以上の表示能力を持ちます。結果、利用者としては、見た目は今までと変わらず電力消費が少なくて済むので“電池が長持ちする”ということになります。

また、技術的には必要以上の電力を消費しないために、内部で繊細なコントロールがなされているということになります。

■ペン操作がしやすい
IGZOは、省電力以外にもいくつか特徴があります。その一つにペンでの操作のしやすさです。これは、タッチ検出するときは液晶を止め、検出しないとき液晶を動かすようにすることで、タッチパネルの性能が向上させるというもの。短時間で、タッチ検出>液晶駆動>タッチ検出>液晶駆動を切り替えることで、静電式タッチパネルでも快適なペン入力ができるようになっています。

■スマホ本体も細くできる?
さらに、IGZOは本体の大きさにも影響を与えています。ディスプレイ周りのトランジスタの小型化が可能なので、液晶周囲のフレームを細くできるそうです。最近のシャープのAQUOS PHONEやAQUOS PADがスリムな本体になったのも、こうしたIGZOによる恩恵のひとつのようです。

スマートフォンにおいては、液晶による消費電力の割合が高く、そうした需要を見込めるポイントに技術を投入してきたことが、高く評価されています。バッテリーの大型化だけでなく、液晶そのものの省電力化を実現したIGZOの技術は、シャープを救っただけでなく今後のスマートフォンやタブレットなど、液晶ディスプレイを必要とする市場にとって大きな影響を与えていくことでしょう。