目の検診、東電社員4割受けず 福島第一原発で作業

東京電力福島第一原発で事故後に働いた作業員のうち、被曝(ひばく)による健康被害を見つけるため国が定めた年1回の目の検診を受けていない人が、東電社員だけでも約4割の247人にのぼることがわかった。下請け企業を含めると相当数に膨らむ可能性がある。厚生労働省は人数の把握を急いでおり、近く公表する方針だ。

 厚労省は2011年10月、事故後に緊急作業をした約2万人について健康管理の指針を決めた。被曝量が50ミリシーベルトを超えたら特殊な器具による目の検診、100ミリを超えたらがん検診をそれぞれ年1回受ける必要がある。

 東電によると、12年度に目の検診が必要な社員は647人いたが、実際に受けたのは400人だった。一方、胃がんや肺がんなどの検診は対象者のうち2人を除く144人が受けた。被曝した場合、がんに加えて白内障のリスクも高まることが十分に周知されておらず、東電は「対象者の社員全員が受けるよう取り組む」としている。

 下請け作業員の検診状況について東電は把握していないが、安全管理態勢が不十分な零細業者が多く、退社して連絡がつかない人も少なくないため、東電社員よりも未受診の割合は高いとみられる。

 厚労省は東電や下請けから検診結果を集めてデータベースを作ると11年10月に発表したが、企業から送られてくるデータに名前や生年月日の間違いが約8千件見つかり、今も稼働していない。このため、検診で異常が見つかった人数も把握できていない。厚労省や東電は作業員の安全を守ると表明してきたが、原発事故から2年4カ月たった今も責任の所在はあいまいだ。

 厚労省は「データに予想外の大量のミスが見つかった。作業員には個別の相談窓口も用意している」と釈明している。相談電話は0120・808・609(平日午前9時から午後5時)。

〈被曝限度〉 作業員は1年間で50ミリシーベルト、5年間で100ミリを超える放射線量を浴びると原発構内で働けなくなる。国は11年3月の原発事故後、緊急時の措置として250ミリまで働けるよう基準を緩和し、同年12月に通常に戻した。一般の人の目安は年1ミリ。